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医療新世紀
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2010.03.09

健康長寿のまちづくり 
在宅医療や働く場 
千葉と福井で、東大

 国民の3人に1人が高齢者という長寿社会を20年後に控え、地域を丸ごと、お年寄りに優しいまちにつくり変えるプロジェクトを東京大が始めた。24時間対応の在宅医療拠点や、働く場を備えた集合住宅の整備を千葉県柏市でスタート。福井市では高齢者が利用しやすい交通を模索する。
 ▽持続可能なシステム
 「今の社会は子どもが30%、高齢者が5%というピラミッド型の人口構成を想定している」と指摘するのは、東大高齢社会総合研究機構 の秋山弘子・特任教授。医学や工学、社会学などを統合した「老年学(ジェロントロジー)」のまとめ役だ。20100309honki2.gif
 2005年の総人口に占める65歳以上の割合は約20%。推計ではこれが30年に約32%になり、55年には約41%に達する。特に75歳以上が急増し、既存の医療システムでは対応できなくなる。
 一方、多くの高齢者は70代半ばまで介護を必要としないことが東大の調査で判明。秋山さんは「元気なお年寄りを社会がどう活用するかも大きな課題。将来を見据えて持続可能なシステムをつくる必要がある」と話す。
 ▽いつでもケア
 プロジェクトの最初の舞台は千葉県柏市。人口約40万、都心まで30分程度の首都圏の平均的なベッドタウンだ。
 1960年代に柏駅近くに建設された公団住宅「豊四季台団地」には、多くの勤労世帯が入居した。半世紀を経て建物は老朽化し、入居者の3分の1を65歳以上が占める。「20年後の日本の高齢化率とほぼ同じ。建て替えに合わせてまちづくりをするのにぴったりだった」と秋山さん。
 東大と柏市、都市再生機構の共同構想はこうだ。古い5階建て住宅を壊し、エレベーターを備えバリアフリー対応の10~14階建てマンションを建築。団地の真ん中に、24時間体制で在宅医療に応じる診療所や訪問看護・介護ステーションを設置する。風邪や足腰の不調なら大病院に行かずに済み、必要なケアがいつでも受けられる仕組みだ。
 ▽生きがいづくり
 体だけでなく心の健康も大切だ。団地の居住者には退職後に生きがいを見つけられず、家でくすぶっている人が少なくないことが判明。満員電車で通勤するのはいやだが、好きな時に好きなだけ働くのは歓迎という人が多いことも分かった。20100309honki1.gif
 そうした高齢者向けに検討しているのが、近くの休耕田で都市型農業を営んだり、団地の屋上を農園にするアイデア。また交流の場を兼ねたコミュニティー食堂をつくり、そこでも働けるようにする。食堂では一人暮らしの高齢者や働くお母さんのためにテークアウトの総菜も用意。学童保育など子育てにも高齢者パワーを活用する。
 柏市保健福祉部の木村清一部長は「4~5年後にこうした環境を実現するのが目標」と話す。
 ▽ネットワーク
 東大は福井市でもプロジェクトを検討中で、首都圏と違った地方都市の課題が浮き彫りになりつつある。
 都市の周辺地域に住宅地などが広がる「郊外化」に公共交通網が対応しておらず、ちょっとした買い物や病院に行くにも車が必要。体が弱って自分で運転できなくなると、助けのない高齢者は生活に支障が出る。福井市は共働き率が高く、介護の担い手が家庭に少ないため、特別養護老人ホームの需要が特に高いという。
 「どんな対策が必要か自治体と一緒に探っている段階で、まだ形になっていない」と秋山さん。駅前や公共施設の近くに高齢者向け集合住宅をつくる手法や、お年寄りが利用しやすい公共交通の実験などを検討する。
 今後は全国の大学に呼び掛けてネットワークづくりも進める。秋山さんは「高齢者をめぐる課題は地域で異なる。大学が連携してノウハウを共有し、元気で楽しく暮らせる豊かな長寿社会を実現したい」と語る。(共同通信 吉村敬介)(2010/03/09)