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2010.01.19

<進まぬはしか対策>
怖い合併症、ワクチンを 
多屋馨子・国立感染研室長

国の「麻しん対策技術支援チーム」のメンバーでもある多屋馨子・国立感染症研究所感染症情報センター室長に、はしか対策の現状を聞いた。

 ―日本では「たかがはしか」と思っている人が多い。
 「ワクチンが普及したため、はしかが重症化して死亡するケースを多くの人は見ていないからではないか。患者が減っていることもあり、すっかり忘れられている。ワクチンがない時代は、一度はかからなければならない病気で『命定めの病』と言われていた。命を落としていた時代は皆はしかを怖いと思っていた」
 ―何が怖いのか。
 「私が研修医のころ、感染症専門の病院で子どもの患者をたくさん診たが、その重症度に衝撃を受けた。はしかには治療薬がなく、入院しても点滴などの対症療法しかない。治すことができなかったケースも経験した。今も治療薬がない状況に変わりはなく、かからせたくない病気だ」
 「根本的な治療法がないことはもちろんだが、はしかにかかると合併症が怖い。合併症の発症率は30%という調査もある。死因は主に肺炎と脳炎で、免疫機能が落ちるため、ほかの感染症を併発して重症になる恐れもある。治ったとしても、ごくまれだが、数年後に全身にまひ症状が出る亜急性硬化性全脳炎(SSPE)を発症することもある。発症すると致死率も高い」
 ―ワクチンの効果は。
 「はしかのワクチンは高い免疫効果が期待でき、2回接種すれば99%かからないだろう。多くの人が接種すれば、その人がかからないだけでなく流行を抑えることもでき、95%の人が免疫を持っていれば、流行しないとされている。流行させないためには接種率を高めることが鍵になる」
 ―海外の状況は。
 「南北アメリカは2002年に、はしかの『排除』を達成した。韓国では00~01年の大流行を受け、5カ年計画でワクチンの2回接種徹底や、小児への追加接種のキャンペーンを進めた結果、06年に排除を宣言した」
 ―日本は12年の排除を目標としている。
 「国内でも08年に1万人を超えていた患者が09年には千人を切り、10分の1以下となった。10代の患者減少はワクチンの効果と考えられる。だが、はしかは数年の周期で大きな流行が起きる。患者の減少は流行の谷間で自然経過の可能性も一部あるだろう」
 ―中高生のワクチン接種率が低い。20100119interview.jpg
 「接種率が高い自治体は、熱心に取り組む担当者がいて、各部署の連携が良いところだ。接種率を高めるには実施主体の市町村、特別区のほか、地域の医師会や教育委員会、学校との連携が必要になる。学校で集団接種を行っているところは接種率が高い。大学などの入学前に、ワクチンを接種したという証明書を提出させるようにするだけでも効果が上がると思う」
 ―排除は可能か。
 「接種率が低いままではできないだろう。5、6年後にはまた流行してしまう恐れがある。自分がかからないようにするだけでなく、人にうつさないようにする意識も必要だ。接種対象の人はぜひ受けてほしい」(共同通信 山本峰次)(2010/01/19)