47NEWS >  共同ニュース >  医療・健康  >  医療新世紀 >  早期発見で視覚障害防げ 初期は自覚症状なく進行 国内で少ない包括検診
医療新世紀
今週のニュース
2009.12.22

早期発見で視覚障害防げ 
初期は自覚症状なく進行 
国内で少ない包括検診

 高齢化社会の進行で増加が予想されている視覚障害。原因となる病気の多くが、初期は自覚症状がないか、あっても非常に軽いまま進行する。専門家は視力だけでない包括的な検診の重要性を訴えるが、こうした検診を受けた経験のある人は日本では少ない。
 ▽5疾患で4分の3
 国内には、矯正視力で良い方の目が0・1以下の「失明」と、0・1より上で0・5未満の「低視力」を合わせた視覚障害(米国の基準)の人が、2007年の時点で計約164万人いると試算されている。日本眼科医会 がこのほど発表した。
 「全体の半数は70歳以上。60歳以上だと72%を占める。視覚障害は高齢者の大きな問題だ」と、試算を担当した国立病院機構東京医療センター の山田昌和部長。30年ごろには約200万人に達しピークを迎え、その後、総人口の減少で減り始めると予想している。20091222honki.jpg
 原因は多い方から緑内障、糖尿病網膜症、変性(病的)近視、加齢黄斑変性、白内障の順。これら5疾患で全体の4分の3を占める。
 このうち白内障は水晶体の濁りを取り除き、人工のレンズを移植する手術で視力が改善するが、「改善すると言えるのはこの病気だけ。目の異常をできるだけ早く見つけ、その時点での状態を維持することが将来、困らないことにつながる」と、山田さんは検診の意義を強調する。
 ▽眼底写真
 山田さんが勧める方法のひとつが眼底写真の撮影。通常の眼底検査が薬で瞳孔を広げ、医師がレンズで視神経や網膜、血管を調べるのに対し、専用機器で撮影した画像で診断するもので、瞳孔を広げずに撮影するタイプが普及している。
 5疾患いずれも「眼底写真でもかなりのことが分かる」(山田さん)が、例えば緑内障なら視神経乳頭と呼ばれる部分を調べることで、視野が欠けるなど自覚症状がない段階での診断が可能。糖尿病網膜症も、血管の壁から血液がしみ出す点状・斑状の出血など、初期の変化をとらえられる。変性近視でも、網膜が薄くなり外側の脈絡膜の血管が赤く透けて見えるなどするという。
 眼底写真はさらに、血管の状態を観察して動脈硬化の程度を評価することも可能。「メタボリック症候群を、腹囲の測定より効率よく把握できるようになる可能性もある」と、山田さん。
 ただ見える範囲や精度には限界があり、写真を判定する医師らの技量にも結果が左右されやすいため、精密検査へのふるい分けに使うのが一般的だという。
 ▽「時間がない」
 検診の項目には、眼底以外にも眼圧の測定や細隙灯という拡大鏡を使った検査などがある。これに裸眼や矯正視力の測定といった基本的検査の結果も含め、目の機能や疾患の有無を眼科医らが判断するのが包括的眼科検診だ。
 医薬品メーカーのジョンソン・エンド・ジョンソンは、日本を含む13カ国で計6500人を対象に眼科検診の実態調査を実施したところ、日本で包括的検診を受けた経験のある人はわずか28%だった。20091222honki2.jpg
 欧米諸国やオーストラリアが64~77%だったのに比べ、日本はシンガポール(28%)、中国(25%)と並ぶ最低水準で、理由を尋ねると「時間がない」が最も多かった。
山田さんは「40歳以降は何年かおきに検診を受ける仕組みをつくったり、特定健康診査(メタボ健診)に必須項目として眼底検査を組み込んだりできれば、将来の視覚障害を減らせるのではないか」と話している。(共同通信 江頭建彦) (2009/12/22)20091222honki.gif