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2009.11.03
過敏性腸症候群を見逃すな
繰り返す下痢や便秘
質問票や内視鏡で取り組み
下痢や便秘といった下腹部の不快な症状に繰り返し悩まされる「過敏性腸症候群(IBS)」。患者は国内に1200万人ともいわれ、適切な治療が受けられていない人が多いという。専門医は、症状を見逃さずに把握する質問票の作成や、内視鏡検査を効果的な治療につなげる取り組みを進めている。
▽厄介な同居人
「高血圧やメタボリック症候群は、症状が出た時には命にかかわることもある『サイレントキラー(沈黙の殺人者)』。これに対しIBSは、死亡原因となることはないが、不快な症状が長く付きまとう『ノイジールームメート(厄介な同居人)』だ」。木下芳一・島根大 教授(消化器内科)はこう説明する。
IBSの下痢や便秘は腹痛やおなかの張り、ごろごろ鳴るなどの症状を伴い、排便で症状が軽くなることが多い。通勤途中にトイレに駆け込んだり、試験や大事な会議の前に腹痛に見舞われたりと、生活の質(QOL)が低下する。
大腸には消化物から水分を吸収し、適度な硬さで1日1回排せつさせる重要な働きがある。張り巡らされた神経のネットワークがコントロールしており、ストレスや怒り、不安など精神的影響を受けやすいという。
「ふつうの人でもストレスが強ければ症状が出るが、日常の軽い刺激で起きてしまうのがIBSだ」と木下さん。遺伝や生活環境なども原因として指摘されているが、不明なことが多い。
▽病気の自覚なし
IBS患者の多くは下痢や便秘を体質とあきらめ、適切な治療を受けていないとされる。木下さんらが男性2万人を対象にインターネットで行った調査でも、IBSの国際的な診断基準に該当した人の64%が、自分の症状を「病気ではない」と答え、ほかの病気で医療機関を受診した際にも、55%は腹部の症状を相談していなかった。
一方、医師にIBSの診療について聞いたところ「患者の訴えが多く時間がかかる」「ほかの病気の除外が面倒」などの回答が目立った。これを受けて木下さんらは、IBSを含めた上部、下部の消化器症状を簡単に確認できる質問票をつくった。15項目中6項目が下腹部の症状に関するもので、患者が困る症状の拾い上げや、治療効果の判定に活用が期待される。
▽状態理解し克服
大腸内視鏡をIBSに積極的に使っているのは、横浜市立市民病院 の水上健・内視鏡センター長。大腸の内視鏡検査は苦痛だと敬遠する人もいるが、水上さんは少量の水を注入して空気を抜き、腸が伸びないようにして痛みがほとんどない「浸水法」を開発。世界的に注目されている。
浸水法では通常、麻酔を使わず腸管の運動を抑える鎮痙剤のみを使用する。しかし、IBS患者にはこの薬が効かない人がおり、内視鏡検査という心理的な緊張が腸管の運動を引き起こしていることが分かった。
「こうした人たちに『あなたの病気は腸管の運動異常。がんやポリープ、炎症性腸疾患ではない』と画像を見せながら説明し、自分の状態を理解してもらうと、多くの人は症状を克服できる」と水上さん。不安から症状が悪化し、さらに不安が募る悪循環を検査で断ち切り、薬物治療を効果的に行えるという。
水上さんは、便秘型のIBSの女性や、下痢と便秘の混合型の人では、腸管のねじれなど形態的な異常が多いことも突き止めた。こうしたケースにストレスはあまり関係せず、結婚、出産といった生活の変化で運動が減ったことなどが関与している。便を軟らかくする薬の処方や、腸の状態に合わせたマッサージ、運動の指導で治療している。(共同通信 江頭建彦)(2009/11/03)
▽厄介な同居人
「高血圧やメタボリック症候群は、症状が出た時には命にかかわることもある『サイレントキラー(沈黙の殺人者)』。これに対しIBSは、死亡原因となることはないが、不快な症状が長く付きまとう『ノイジールームメート(厄介な同居人)』だ」。木下芳一・島根大 教授(消化器内科)はこう説明する。

IBSの下痢や便秘は腹痛やおなかの張り、ごろごろ鳴るなどの症状を伴い、排便で症状が軽くなることが多い。通勤途中にトイレに駆け込んだり、試験や大事な会議の前に腹痛に見舞われたりと、生活の質(QOL)が低下する。
大腸には消化物から水分を吸収し、適度な硬さで1日1回排せつさせる重要な働きがある。張り巡らされた神経のネットワークがコントロールしており、ストレスや怒り、不安など精神的影響を受けやすいという。
「ふつうの人でもストレスが強ければ症状が出るが、日常の軽い刺激で起きてしまうのがIBSだ」と木下さん。遺伝や生活環境なども原因として指摘されているが、不明なことが多い。

▽病気の自覚なし
IBS患者の多くは下痢や便秘を体質とあきらめ、適切な治療を受けていないとされる。木下さんらが男性2万人を対象にインターネットで行った調査でも、IBSの国際的な診断基準に該当した人の64%が、自分の症状を「病気ではない」と答え、ほかの病気で医療機関を受診した際にも、55%は腹部の症状を相談していなかった。
一方、医師にIBSの診療について聞いたところ「患者の訴えが多く時間がかかる」「ほかの病気の除外が面倒」などの回答が目立った。これを受けて木下さんらは、IBSを含めた上部、下部の消化器症状を簡単に確認できる質問票をつくった。15項目中6項目が下腹部の症状に関するもので、患者が困る症状の拾い上げや、治療効果の判定に活用が期待される。
▽状態理解し克服
大腸内視鏡をIBSに積極的に使っているのは、横浜市立市民病院 の水上健・内視鏡センター長。大腸の内視鏡検査は苦痛だと敬遠する人もいるが、水上さんは少量の水を注入して空気を抜き、腸が伸びないようにして痛みがほとんどない「浸水法」を開発。世界的に注目されている。
浸水法では通常、麻酔を使わず腸管の運動を抑える鎮痙剤のみを使用する。しかし、IBS患者にはこの薬が効かない人がおり、内視鏡検査という心理的な緊張が腸管の運動を引き起こしていることが分かった。
「こうした人たちに『あなたの病気は腸管の運動異常。がんやポリープ、炎症性腸疾患ではない』と画像を見せながら説明し、自分の状態を理解してもらうと、多くの人は症状を克服できる」と水上さん。不安から症状が悪化し、さらに不安が募る悪循環を検査で断ち切り、薬物治療を効果的に行えるという。

水上さんは、便秘型のIBSの女性や、下痢と便秘の混合型の人では、腸管のねじれなど形態的な異常が多いことも突き止めた。こうしたケースにストレスはあまり関係せず、結婚、出産といった生活の変化で運動が減ったことなどが関与している。便を軟らかくする薬の処方や、腸の状態に合わせたマッサージ、運動の指導で治療している。(共同通信 江頭建彦)(2009/11/03)


