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2009.10.13
思いに応える姿勢生む
和田仁孝・早稲田大教授
医療メディエーション普及の背景や意義について、日本医療メディエーター協会代表理事の和田仁孝・早稲田大大学院法務研究科教授に聞いた。
―医療メディエーションが注目される背景は。
「医療者と患者のコミュニケーションの貧困化があります。医療は高度化、複雑化し、医師らの業務量は文書書きなどの周辺業務も含めて飛躍的に高まっています。医師不足なども重なり患者とじっくり話をできるような状況はまれです。一方、患者の医療への『期待値』は上がり、現実とのギャップを感じるケースも増えています」
「例えば、5%のリスクがある手術について医師が患者に説明するとします。通常、医師はこの手術は非常に高いリスクがあると考えますが、患者は5%なら安心と受け取り、合併症などが起きた時『そんな説明は受けていなかった』として紛争になるかもしれません。こうした事態にならないためには、理論と経験に基づき構成されたソフトウエアとしてのメディエーションが有効です」
―従来こうした問題は訴訟で扱われたのでは。
「かつては医療側が事実を隠すといった問題が取り上げられ、訴訟も重要な役割を果たしてきました。半面、法的責任が明らかになっても真相の究明にはつながらず、『自分たちと向き合ってほしい』という患者側の願いが満たされないケースもあるのです。訴訟は重要ですが、対話の促進で不要な紛争を防ぐためにも、初期段階の対応としてメディエーションは医療側にも患者側にも意味があります」
―病院側はメディエーターに、自分に都合のよい結果を出すことを期待しないか。偏りのない立場は可能か。
「メディエーターは『自分の意見を言わない』『評価・判断を下さない』点を押さえる必要があります。医療者、患者から情報を引き出し食い違いが生じないようにし、両者の関係を修復するための対話促進が役割で、病院を背負わない立場でかかわります。メディエーターのこうした立場に対する病院上層部の理解が鍵を握るともいえます」
―病院内のスタッフが適任なのか。
「初期のメディエーションにはスピード感が必要で、院内のことをよく分かる人の方が望ましいと考えています。まったくの第三者では逆にごまかされる恐れもあり、当該施設の医療を理解し、かつトレーニングを受けて正しい姿勢と倫理観のある人が適任です」
―導入で現場にはどのような変化が?
「導入した病院の多くは、メディエーター以外のスタッフも院内で研修を受けるなどしてメディエーションの考え方を学んでいます。事故やトラブルの時に限らず、医師の患者への対応の質が向上し、院内の文化が変わり、患者とのトラブルや紛争そのものが減っていく効果があります」
―患者とはうまくやっており、このような仕組みは不要と考える医師らも少なくないのでは。
「誠実な医療者でも、真意が伝わらないなどして誤解が広がることはあり、医療者と患者の双方を、メディエーターが黒子として支える場面は出てきます。多くの医療者は自分なりの方法や経験でうまく対応していますが、やはり人間なのであたふたしてしまう場面もあります」
「メディエーションの理論的背景を知れば、患者の怒りや言葉でなく、その背後にある思いに応えようという姿勢が生まれ、精神的負担も減ります。患者側も間に人が入ることで別の視点を持てるようになるのです」(共同通信 江頭建彦)(2009/10/13)
―医療メディエーションが注目される背景は。
「医療者と患者のコミュニケーションの貧困化があります。医療は高度化、複雑化し、医師らの業務量は文書書きなどの周辺業務も含めて飛躍的に高まっています。医師不足なども重なり患者とじっくり話をできるような状況はまれです。一方、患者の医療への『期待値』は上がり、現実とのギャップを感じるケースも増えています」
「例えば、5%のリスクがある手術について医師が患者に説明するとします。通常、医師はこの手術は非常に高いリスクがあると考えますが、患者は5%なら安心と受け取り、合併症などが起きた時『そんな説明は受けていなかった』として紛争になるかもしれません。こうした事態にならないためには、理論と経験に基づき構成されたソフトウエアとしてのメディエーションが有効です」
―従来こうした問題は訴訟で扱われたのでは。
「かつては医療側が事実を隠すといった問題が取り上げられ、訴訟も重要な役割を果たしてきました。半面、法的責任が明らかになっても真相の究明にはつながらず、『自分たちと向き合ってほしい』という患者側の願いが満たされないケースもあるのです。訴訟は重要ですが、対話の促進で不要な紛争を防ぐためにも、初期段階の対応としてメディエーションは医療側にも患者側にも意味があります」
―病院側はメディエーターに、自分に都合のよい結果を出すことを期待しないか。偏りのない立場は可能か。
「メディエーターは『自分の意見を言わない』『評価・判断を下さない』点を押さえる必要があります。医療者、患者から情報を引き出し食い違いが生じないようにし、両者の関係を修復するための対話促進が役割で、病院を背負わない立場でかかわります。メディエーターのこうした立場に対する病院上層部の理解が鍵を握るともいえます」
―病院内のスタッフが適任なのか。
「初期のメディエーションにはスピード感が必要で、院内のことをよく分かる人の方が望ましいと考えています。まったくの第三者では逆にごまかされる恐れもあり、当該施設の医療を理解し、かつトレーニングを受けて正しい姿勢と倫理観のある人が適任です」
―導入で現場にはどのような変化が?

「導入した病院の多くは、メディエーター以外のスタッフも院内で研修を受けるなどしてメディエーションの考え方を学んでいます。事故やトラブルの時に限らず、医師の患者への対応の質が向上し、院内の文化が変わり、患者とのトラブルや紛争そのものが減っていく効果があります」
―患者とはうまくやっており、このような仕組みは不要と考える医師らも少なくないのでは。
「誠実な医療者でも、真意が伝わらないなどして誤解が広がることはあり、医療者と患者の双方を、メディエーターが黒子として支える場面は出てきます。多くの医療者は自分なりの方法や経験でうまく対応していますが、やはり人間なのであたふたしてしまう場面もあります」
「メディエーションの理論的背景を知れば、患者の怒りや言葉でなく、その背後にある思いに応えようという姿勢が生まれ、精神的負担も減ります。患者側も間に人が入ることで別の視点を持てるようになるのです」(共同通信 江頭建彦)(2009/10/13)


