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2009.10.13

<医療メディエーション>
医師と患者の橋渡し 
中立的立場で関係再構築

 医療機関で医療側と患者側との対話を仲立ちする「医療メディエーション」と呼ばれる手法が広がっている。医療不信や医師不足を背景に、良好なコミュニケーションの維持が難しくなっているといわれる中、信頼される医療を目指した取り組みは実を結ぶか。

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 福井総合病院(福井市)の看護師長だった林里都子さんは2002年、安全管理部門の責任者になり、患者や家族からの苦情、要求への対応に当たるようになった。事務方が引き受けていたそれまでの方法を改め、自身が同席して医師側と患者側に直接面談してもらうようにした。手探りの取り組みで当初は反発もあったが、橋渡し役に徹するうちに「話ができてよかった」との声が聞かれるようになった。2年後、これが「医療メディエーション」の手法だったことを知った。
 ▽歩み寄り
 医療メディエーションは、苦情や医療事故発生時の初期の対応として、中立的な院内の仲介者(メディエーター)が話し合いに同席して当事者に対話を促し、信頼関係を再構築できるようにする仕組み。英国、米国などでも普及が進んでいる。
 「面談で事実経過を共有することでお互いが見えるようになり、認識のずれに気付き歩み寄っていける」と、林さん。20091013honki1.jpg
 入院中の母親の死に納得できないという兄弟と、担当医とを仲介したケースがあった。担当医側も真摯に向き合い、4回目の面談時、兄弟の一人が、入院のきっかけとなった骨折の原因が自分にあり、そのために母を死に追いやったのではないかと自分を責め続けていることが分かった。
 担当医は自然に「それはつらかったでしょうね」と声を掛けた。兄弟の間では「そんなことは気にしなくていい」と言葉が交わされた。最終的に兄弟は、担当医の説明に十分、納得したという。
 ▽訴訟防止ではない
 メディエーターは国家資格ではなく、日本では現在、専門機関が認証したプログラムによる研修を受けた医療機関の職員が認定されている。福井総合病院では医師や看護師らも研修を受け、受講者が増えるにつれ苦情などが減少している。
 林さんは「メディエーションの役割は医療訴訟を未然に防ぐことではない。忙しさなどを理由に患者や家族に向き合わない現状に、どう対応するかの答えがここにある」と強調する。
 導入を後押しした辻哲朗・脳神経外科部長も「医師の中にも、患者にどう対処していいか分からない者もおり、こういう仕組みは大事。メディエーターに頼らず、本来は一人一人が役割を担えるのが理想だ」。
 苦情や要求から面談実施に至ったケースは7年間で52件。この半数以上は、患者側から具体的な要求が出される1週間以上前に何らかの苦情がありながら、職員が対応しきれていないケースだった。
 現場で日常の訴えを放置せず、良好なコミュニケーションを保つにはどうすればいいか。林さんが、メディエーションの考え方を日常化するために導入したのが「スマイルスコア」だ。
 ▽看護師長が毎日
 同病院では患者を交代で受け持つ看護師以外に、八つの病棟ごとに、約40人の患者に責任を持つ看護師長が1人ずついる。林さんは、師長が自分の担当患者全員と毎日必ず顔を合わせ、患者の満足度を「大満足」(笑顔)から「大不満足」(泣き顔)まで6段階で評価、院内のパソコンに入力するようにした。20091013honki2.jpg
 「顔を見るだけで様子が分かることもあるし、10分以上話し込むこともある。朝食の時間帯に回るが、気になる患者がいればその日のうちにもう一度会う」と、整形外科の病棟を担当する吉田一代師長。
 平尾紀美枝師長(呼吸器内科)も「毎日行くことで親近感がわき、たわいもない話の中で変化に気付ける」。メディエーションやスマイルスコアによって、患者と向き合うという当たり前のことを意識できるようになったという。林さんは「思いやり」が徐々に定着しているのを感じている。(共同通信 江頭建彦)(2009/10/13)