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2009.08.25
抗がん剤の脱毛を予防
頭皮冷却装置、治験開始へ
効果と安全性示すデータ
抗がん剤の副作用として起き、患者に強い精神的苦痛を強いる脱毛を予防・軽減する頭皮冷却装置が欧州を中心に普及している。日本では未承認だが、乳がん患者の同意を得て200人以上に使った医療機関で、効果と安全性を示すデータが示された。年内にも承認申請に向けた治験(臨床試験)が始まる。
▽「最も苦痛」
抗がん剤治療の成績は、新薬の開発や複数の薬を組み合わせる手法によって向上。乳がんの分野でも進歩が著しいが、一方で副作用は避けられず、嘔吐や吐き気、白血球減少などに加え、毛根を包む毛包が薬によるダメージを受けて起きる脱毛も高頻度で見られる。
嘔吐や吐き気は薬で改善されるケースが増えてきたが、脱毛への取り組みはあまり進んでいない。抗がん剤治療が終われば数カ月でまた生えてくることも理由だ。
だが「髪の毛が抜けるなら、抗がん剤治療を受けたくないという人もいる」と話すのは、年間約300件以上の乳がん手術を手掛ける加藤乳腺クリニック (滋賀県草津市)の加藤誠院長。抗がん剤治療で最も苦痛に感じる副作用は脱毛だとの調査もあり、医師として歯がゆさを感じることが多かったという。
▽血流が減少
加藤さんが、済生会滋賀県病院(滋賀県栗東市)の小林忠男・臨床検査部長らと共同で研究を行った装置は、スウェーデンで開発された「ディグニキャップ」。現地のがん治療専門の看護師や医師らの研究を基に製品化され、欧州で2002年に認可された。
本体部分と、チューブでつながったシリコーン製のキャップ(帽子)から成り、冷却した液体をキャップに張り巡らされた溝に流し、患者の頭皮を冷やす仕組み。1台で同時に2人が使用でき、通常は抗がん剤点滴中の1~2時間と、その前後の各30分間、キャップをかぶる。かぶったままの移動や、一時的にチューブを外してトイレに行くこともできる。
「冷却することで血管が収縮して毛包の血流が減少し、点滴で抗がん剤の血中濃度が高まっても毛包へのダメージを抑えられる。頭部での抗がん剤の活性も低下する」と、加藤さん。キャップの前頭部と後頭部には温度センサーがあり、均一に4度前後を保ち続ける。
▽満足度90%
加藤さんらは厚生労働省の許可を得て、抗がん剤治療を受ける乳がん患者で研究に同意した人たちに07年夏以降、装置を付けてもらった。
1年の間に抗がん剤治療を終えた患者80人の状態を、世界保健機関(WHO)の5段階の尺度で評価。「脱毛なし」は61%で、これを含む満足度を約90%と判断した。不快感や痛みといった副作用を訴えた人はゼロで、心配した冷たさについては、むしろ気持ち良さを感じた人が多いという。
これまでの使用は計二百数十人。加藤さんは「治療期間の半分だけ使用した人などもおり、正確な評価は今後の課題だが、かなり控えめに見ても脱毛は半減し、かつらを使用する人の数は装置導入前の3分の1になった」と説明する。
「毛髪クリニックリーブ21」(大阪市)は7月、スウェーデンのメーカーと独占販売代理契約を結び、日本国内での承認を目指すと発表。秋をめどに3カ所程度の施設で治験が始まる予定。
治験を担当する吉本賢隆・国際医療福祉大 教授は「抗がん剤の併用療法の種類によっては効果が分かっていないものもあるが、『脱毛は仕方ない』と患者に強いてきた現状が変わる日を楽しみにしている」と話す。(共同通信 江頭建彦)(2009/08/25)
▽「最も苦痛」
抗がん剤治療の成績は、新薬の開発や複数の薬を組み合わせる手法によって向上。乳がんの分野でも進歩が著しいが、一方で副作用は避けられず、嘔吐や吐き気、白血球減少などに加え、毛根を包む毛包が薬によるダメージを受けて起きる脱毛も高頻度で見られる。嘔吐や吐き気は薬で改善されるケースが増えてきたが、脱毛への取り組みはあまり進んでいない。抗がん剤治療が終われば数カ月でまた生えてくることも理由だ。
だが「髪の毛が抜けるなら、抗がん剤治療を受けたくないという人もいる」と話すのは、年間約300件以上の乳がん手術を手掛ける加藤乳腺クリニック (滋賀県草津市)の加藤誠院長。抗がん剤治療で最も苦痛に感じる副作用は脱毛だとの調査もあり、医師として歯がゆさを感じることが多かったという。
▽血流が減少
加藤さんが、済生会滋賀県病院(滋賀県栗東市)の小林忠男・臨床検査部長らと共同で研究を行った装置は、スウェーデンで開発された「ディグニキャップ」。現地のがん治療専門の看護師や医師らの研究を基に製品化され、欧州で2002年に認可された。
本体部分と、チューブでつながったシリコーン製のキャップ(帽子)から成り、冷却した液体をキャップに張り巡らされた溝に流し、患者の頭皮を冷やす仕組み。1台で同時に2人が使用でき、通常は抗がん剤点滴中の1~2時間と、その前後の各30分間、キャップをかぶる。かぶったままの移動や、一時的にチューブを外してトイレに行くこともできる。
「冷却することで血管が収縮して毛包の血流が減少し、点滴で抗がん剤の血中濃度が高まっても毛包へのダメージを抑えられる。頭部での抗がん剤の活性も低下する」と、加藤さん。キャップの前頭部と後頭部には温度センサーがあり、均一に4度前後を保ち続ける。
▽満足度90%
加藤さんらは厚生労働省の許可を得て、抗がん剤治療を受ける乳がん患者で研究に同意した人たちに07年夏以降、装置を付けてもらった。1年の間に抗がん剤治療を終えた患者80人の状態を、世界保健機関(WHO)の5段階の尺度で評価。「脱毛なし」は61%で、これを含む満足度を約90%と判断した。不快感や痛みといった副作用を訴えた人はゼロで、心配した冷たさについては、むしろ気持ち良さを感じた人が多いという。
これまでの使用は計二百数十人。加藤さんは「治療期間の半分だけ使用した人などもおり、正確な評価は今後の課題だが、かなり控えめに見ても脱毛は半減し、かつらを使用する人の数は装置導入前の3分の1になった」と説明する。
「毛髪クリニックリーブ21」(大阪市)は7月、スウェーデンのメーカーと独占販売代理契約を結び、日本国内での承認を目指すと発表。秋をめどに3カ所程度の施設で治験が始まる予定。
治験を担当する吉本賢隆・国際医療福祉大 教授は「抗がん剤の併用療法の種類によっては効果が分かっていないものもあるが、『脱毛は仕方ない』と患者に強いてきた現状が変わる日を楽しみにしている」と話す。(共同通信 江頭建彦)(2009/08/25)


