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2009.07.14
「特編・緩和ケア」
「苦痛」に寄り添う1カ月
緩和ケアを必修に
国立がんセンター中央病院
国民の約3人に1人の死因になっているがん。患者の苦痛を早い段階から取り除く「緩和ケア」の重要性は高まっているが、正確な知識や技術を持った医療スタッフは不足。現場での連携も課題になっている。患者の生活の質(QOL)を高めるため、ケアのすそ野を広げる取り組みが進んでいる。
× × × ×
国内有数のがん専門医療機関、国立がんセンター中央病院 (東京)。会議室で昼食を挟んで続く緩和ケアチームのミーティングに、レジデント(研修医)の姿があった。
「昨夜9時から鎮痛薬の量を増やしました」
「痛みが軽くなって動けるようになると、今度は圧迫骨折などが心配だ。コルセットを使おう」
担当患者の報告に、チームの責任者、的場元弘医長がアドバイスした。
▽人材不足
中央病院は本年度から、毎年20~30人受け入れているレジデントに、交代で1カ月間の緩和ケア研修を必修とした。内科系、外科系といった研修課程の部門は問わない。
がん対策基本法 で整備が進む、全国375(4月現在)のがん診療連携拠点病院でも、適切な提供がうたわれている緩和ケア。だが、現場を担う人材の不足は深刻だ。
「何のトレーニングも受けていない医師らが突然『緩和ケア医』と名乗るケースもある」と的場医長。緩和ケアを含めた幅広い知識と応用力を持ったがん専門医を養成しようと、1年かけてカリキュラムをつくった。
1カ月の間には、入院病棟や外来で患者を診ることに加え、医師会の協力で訪問診療や訪問看護に同行したり、ケアマネジャーの役割を学んだりする1週間の在宅緩和ケア研修も組まれている。
がんセンターは今後、拠点病院の医師向けのトレーニングも手掛けたいとしている。
▽限界つくらず
「緩和ケアを系統立てて学んだことはなかった。手術や抗がん剤といった治療以外にも、患者さんの『今の時間』を充実させるサポートに、ここまでという限界をつくってはいけないことがよく分かった」と話すのは、医師7年目で食道外科が専門の大屋久晴医師。
やはり7年目で泌尿器科を専門とする河原貴史医師も「緩和ケア担当の医師として患者さんと接すると、世間話やありふれた話題を和らいだ顔で話してくれる。主治医としてかかわった時代に、こんな経験はほとんどなかった」。
チームは患者の希望などで他科からの依頼を受け動きだす。レジデント1人が1カ月に担当する新患は5~10人。痛みや全身状態の評価に加え、患者や家族の生活状況や不安、悩みを把握し詳細な記録をつくる。これを基に治療計画を立て、ミーティングやカンファレンス(会議)、検討会で議論を重ねる。
「新患を診る中で、家族や仲間なら当然分かる患者さんの苦悩に気付くようになってほしい」と的場医長。患者が亡くなっても、薬の使い方が効果的だったのか、苦しみを和らげられたかなどをチームで振り返る。
▽願い
午後3時半。チームの村上敏史医師と大屋医師が、乳がんの骨転移で入院中の60代の女性とベッドサイドで向き合っていた。「左の背中の痛みは?」「動いた時にびりびりと来ます」
転移は胸椎などの背骨や仙骨に見つかり、女性は抗がん剤や放射線治療を受ける一方、医療用麻薬の投与量や種類を細かく調整しながら痛みをコントロールしている。
村上医師が「抗がん剤が効けば、痛みは強くなっても一時的で、その後は元に戻りますよ」と語りかけると、女性に笑みが浮かんだ。「それだけを願っています」
中央病院でのレジデント期間が終われば、所属する医局のある大学病院や故郷の病院で、専門を生かしたがん医療に従事したいという2人。大屋医師は「手術もうまくなりたいが、患者さんに最後まで向き合おうとすれば、緩和ケアは必然的についてくる。この1カ月の経験は貴重です」。(共同通信 江頭建彦)(2009/07/14)
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国内有数のがん専門医療機関、国立がんセンター中央病院 (東京)。会議室で昼食を挟んで続く緩和ケアチームのミーティングに、レジデント(研修医)の姿があった。
「昨夜9時から鎮痛薬の量を増やしました」
「痛みが軽くなって動けるようになると、今度は圧迫骨折などが心配だ。コルセットを使おう」
担当患者の報告に、チームの責任者、的場元弘医長がアドバイスした。
▽人材不足
中央病院は本年度から、毎年20~30人受け入れているレジデントに、交代で1カ月間の緩和ケア研修を必修とした。内科系、外科系といった研修課程の部門は問わない。がん対策基本法 で整備が進む、全国375(4月現在)のがん診療連携拠点病院でも、適切な提供がうたわれている緩和ケア。だが、現場を担う人材の不足は深刻だ。
「何のトレーニングも受けていない医師らが突然『緩和ケア医』と名乗るケースもある」と的場医長。緩和ケアを含めた幅広い知識と応用力を持ったがん専門医を養成しようと、1年かけてカリキュラムをつくった。
1カ月の間には、入院病棟や外来で患者を診ることに加え、医師会の協力で訪問診療や訪問看護に同行したり、ケアマネジャーの役割を学んだりする1週間の在宅緩和ケア研修も組まれている。
がんセンターは今後、拠点病院の医師向けのトレーニングも手掛けたいとしている。
▽限界つくらず
「緩和ケアを系統立てて学んだことはなかった。手術や抗がん剤といった治療以外にも、患者さんの『今の時間』を充実させるサポートに、ここまでという限界をつくってはいけないことがよく分かった」と話すのは、医師7年目で食道外科が専門の大屋久晴医師。やはり7年目で泌尿器科を専門とする河原貴史医師も「緩和ケア担当の医師として患者さんと接すると、世間話やありふれた話題を和らいだ顔で話してくれる。主治医としてかかわった時代に、こんな経験はほとんどなかった」。
チームは患者の希望などで他科からの依頼を受け動きだす。レジデント1人が1カ月に担当する新患は5~10人。痛みや全身状態の評価に加え、患者や家族の生活状況や不安、悩みを把握し詳細な記録をつくる。これを基に治療計画を立て、ミーティングやカンファレンス(会議)、検討会で議論を重ねる。
「新患を診る中で、家族や仲間なら当然分かる患者さんの苦悩に気付くようになってほしい」と的場医長。患者が亡くなっても、薬の使い方が効果的だったのか、苦しみを和らげられたかなどをチームで振り返る。
▽願い
午後3時半。チームの村上敏史医師と大屋医師が、乳がんの骨転移で入院中の60代の女性とベッドサイドで向き合っていた。「左の背中の痛みは?」「動いた時にびりびりと来ます」
転移は胸椎などの背骨や仙骨に見つかり、女性は抗がん剤や放射線治療を受ける一方、医療用麻薬の投与量や種類を細かく調整しながら痛みをコントロールしている。
村上医師が「抗がん剤が効けば、痛みは強くなっても一時的で、その後は元に戻りますよ」と語りかけると、女性に笑みが浮かんだ。「それだけを願っています」
中央病院でのレジデント期間が終われば、所属する医局のある大学病院や故郷の病院で、専門を生かしたがん医療に従事したいという2人。大屋医師は「手術もうまくなりたいが、患者さんに最後まで向き合おうとすれば、緩和ケアは必然的についてくる。この1カ月の経験は貴重です」。(共同通信 江頭建彦)(2009/07/14)


