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2009.04.07
泣き笑いの効用に注目
認知症の重症化予防にも
ストレス消え脳のリハビリ
楽しくゲラゲラ笑ったり、何かに感動して泣いたりすると、ストレス解消になってすっきりした気がする。吉野慎一日本医大名誉教授は、こうした「笑い」や「泣き」の効用に注目。専門の関節リウマチだけでなく、認知症患者の重症化予防などに生かそうという研究を進めている。
▽順々に障害
順天堂東京江東高齢者医療センターPET--CT認知症研究センターの井関栄三・臨床研究部門長(老年精神医学)によると、認知症で最も多いのが、初老期から老年期に発症するアルツハイマー型(ATD)。脳の神経細胞が脱落して大脳が萎縮する。
ATDはつい最近のことを忘れるといった記憶力の低下や、時間や場所の認識があやふやになるなど認知機能の障害が特徴。不安や抑うつ、怒りっぽくなるなど性格の変化を伴うこともある。
こうした症状は、脳で記憶をつかさどる海馬や情緒をつかさどる扁桃体から、空間の認識などにかかわる頭頂葉、思考や意欲、想像力など高度な働きを持つ前頭葉、言語理解などの機能を持つ側頭葉へと、大脳の障害が進むにつれ順々に起きてくると考えられている。
▽人間に特有
吉野さんによると、笑ったり泣いたりはそれまでの体験や学習を基に、面白いか悲しいかなどを判断することで初めて生じる生理的現象。動物と違い前頭葉が発達した人間特有のものだという。
「認知症患者が面白い、悲しいなどのビデオを見たときの反応を調べれば、患者の前頭葉にどの程度の機能が残されているかが分かるのでは」。こう考えた吉野さんは昨年、東京電機大の研究者らと共同で、都内の老人保健施設に入所する認知症患者に実験を行った。
使用したのは、いくつかある検査法のうち、11項目で認知機能や記憶力を簡単に測定する「MMSE」。30点満点中、23点以下だと認知症の疑いがある。
1--19点だった80歳から98歳の計20人に、林家木久扇さんの落語のビデオを約15分間見てもらい、反応を「非常に笑った」「笑った」「少し笑った」「笑わなかった」の四段階で評価。脳血流も近赤外線分光法(光トポグラフィー)で調べた。
さらに後日、太平洋戦争末期の悲劇を描いた映画の一場面を見せ、同様に反応や脳血流を見た。
▽副作用なし
MMSEが5点以下の8人で笑った人はおらず、泣いたのも1人だけ。一方、6点以上の12人では点数が低くても笑ったり、点数が高くても笑わなかったりなど、笑いと泣きの両方で反応の程度にばらつきが見られた。笑ったり泣いたりしている時は前頭葉の血流が増え、活動が盛んになった様子もうかがえた。
「点数が極端に低いケースでなければ、脳の機能が残っていて笑いや泣きで活性化する人がいる。これを見つけてあげて、脳の機能低下を食い止めることが大事だ」と吉野さん。
木久扇さんの協力を得て過去に関節リウマチ患者に行った実験では、患者の血液中に含まれ炎症を悪化させる物質や、"ストレスホルモン"と呼ばれるコルチゾールなどが、笑いや泣きの後には減ることも分かっている。吉野さんは、表情や前頭葉の活動が乏しい点で認知症患者と似ているうつ病患者でも、笑いや泣きの効用があるのではないかと考えている。
吉野さんは「笑ったり泣いたりしたときには思考が無になってストレスが消える。いわば『脳のリハビリ』だ。副作用がないので、皆さん大いに笑ったり泣いたりしてみては」と話している。(共同通信 宮崎雄一郎) (2009/04/07)
▽順々に障害
順天堂東京江東高齢者医療センターPET--CT認知症研究センターの井関栄三・臨床研究部門長(老年精神医学)によると、認知症で最も多いのが、初老期から老年期に発症するアルツハイマー型(ATD)。脳の神経細胞が脱落して大脳が萎縮する。ATDはつい最近のことを忘れるといった記憶力の低下や、時間や場所の認識があやふやになるなど認知機能の障害が特徴。不安や抑うつ、怒りっぽくなるなど性格の変化を伴うこともある。
こうした症状は、脳で記憶をつかさどる海馬や情緒をつかさどる扁桃体から、空間の認識などにかかわる頭頂葉、思考や意欲、想像力など高度な働きを持つ前頭葉、言語理解などの機能を持つ側頭葉へと、大脳の障害が進むにつれ順々に起きてくると考えられている。
▽人間に特有
吉野さんによると、笑ったり泣いたりはそれまでの体験や学習を基に、面白いか悲しいかなどを判断することで初めて生じる生理的現象。動物と違い前頭葉が発達した人間特有のものだという。「認知症患者が面白い、悲しいなどのビデオを見たときの反応を調べれば、患者の前頭葉にどの程度の機能が残されているかが分かるのでは」。こう考えた吉野さんは昨年、東京電機大の研究者らと共同で、都内の老人保健施設に入所する認知症患者に実験を行った。
使用したのは、いくつかある検査法のうち、11項目で認知機能や記憶力を簡単に測定する「MMSE」。30点満点中、23点以下だと認知症の疑いがある。
1--19点だった80歳から98歳の計20人に、林家木久扇さんの落語のビデオを約15分間見てもらい、反応を「非常に笑った」「笑った」「少し笑った」「笑わなかった」の四段階で評価。脳血流も近赤外線分光法(光トポグラフィー)で調べた。
さらに後日、太平洋戦争末期の悲劇を描いた映画の一場面を見せ、同様に反応や脳血流を見た。
▽副作用なし
MMSEが5点以下の8人で笑った人はおらず、泣いたのも1人だけ。一方、6点以上の12人では点数が低くても笑ったり、点数が高くても笑わなかったりなど、笑いと泣きの両方で反応の程度にばらつきが見られた。笑ったり泣いたりしている時は前頭葉の血流が増え、活動が盛んになった様子もうかがえた。
「点数が極端に低いケースでなければ、脳の機能が残っていて笑いや泣きで活性化する人がいる。これを見つけてあげて、脳の機能低下を食い止めることが大事だ」と吉野さん。
木久扇さんの協力を得て過去に関節リウマチ患者に行った実験では、患者の血液中に含まれ炎症を悪化させる物質や、"ストレスホルモン"と呼ばれるコルチゾールなどが、笑いや泣きの後には減ることも分かっている。吉野さんは、表情や前頭葉の活動が乏しい点で認知症患者と似ているうつ病患者でも、笑いや泣きの効用があるのではないかと考えている。
吉野さんは「笑ったり泣いたりしたときには思考が無になってストレスが消える。いわば『脳のリハビリ』だ。副作用がないので、皆さん大いに笑ったり泣いたりしてみては」と話している。(共同通信 宮崎雄一郎) (2009/04/07)


