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2008.09.16
医療への敷居、まだ高く
精神科医が自宅訪問
地域がしっかり見守り
患者の急増が見込まれる認知症。一部を除くと治療は難しいが、病気の進行を遅らせたり、家族の負担を軽くしたりするには早めの診断が大事だ。とはいえ、なかなか医療につながらない側面もある。現状を変えるには何が必要なのだろうか。
× × × ×
「物忘れ、ありますか」「あるね。何か持って来なきゃならんのに、どこに置いたかな、そういうことが多いね」
耳が少し遠いという男性(72)に精神科医の本多修さん(44)は大きな声で質問を続けた。居間のテーブルを挟んで向かい合う二人を、妻(68)や長女(34)が見守る。
▽もの忘れ相談
宮城県白石市。仙台市の南にあり、人口約39000人。4分の1は65歳以上の高齢者だ。
市内の病院に勤める本多さんは、8年前から同市の「もの忘れ相談」を一人で担当する。月1回、市の健康センターや相手の家で相談に応じる。
近所への配慮もあり、本多さんは白衣ではなくポロシャツ姿。手本を見ながら立方体を描くといった認知機能の検査は30分ほどで終わった。結果は「中等度の認知症」。
「デイサービスに行った方がいいですよ。頭の血のめぐりが良くなりますから」と本多さん。家族が「頑固だ」という男性は素直にうなずいた。
「もっと早く診てもらったらよかった。本当にありがたいです。子供が小さく、父を病院に連れて行くのが大変なので」。長女はほっとした表情を見せた。
▽大きな温度差
厚生労働省は認知症の高齢者が今後急増し、2015年に250万人、40年に385万人に達すると予測する。
患者と家族が良好な生活を送れるかどうかは、早期発見が鍵を握る。しかし実際には、なかなか診断に結び付かない。
「年だから仕方ない、で済ませている人もいる。普通の人にとって精神科はまだまだ敷居が高いし、認知症の自覚がない人や妄想の出ている人を病院に連れてくるのは難しい」と本多さん。
家族が介護で疲れ果てているのに、認知症でのかかりつけ医がいないため、介護サービスが利用できないこともある。
三重県の開業医は「家族が認知症になったと近所に知られたくないので、病院に連れてこない人がいる。認知症を診られる医師も少ない。地域によって認知症に対する温度差は大きい」と語る。
▽ボランティア
一人で暮らす高齢者の認知症はどうすればいいのだろう。東京都足立区には、ボランティアの「あんしん協力員」と民生委員、商店などの協力機関が高齢者や家族を支える「あんしんネットワーク」という仕組みがある。
区内の一人暮らしの高齢者は約36000人で増加中。「80、90になっても施設に入りたくないという方がいる。場所や人間関係に安心感があるんでしょう」と民生委員の森春枝さん(64)。
協力員は300人余り。8年目の千田好栄さん(70)はほぼ毎日、高齢者の家を自転車で回る。「お元気ですか」「困りごとはないですか」と声を掛けて話し相手にもなり、認知症に気付くと地域包括支援センターに連絡する。「始終、見守りをしてあげるんです」
夫の死後、金融機関の手続きができていなかった女性を見つけ、支援につなげたり、認知症以外の病気に気付き、治療を受けられるようにしたりといった体験もした。
「怖い世の中ですから、高齢者の方に受け入れてもらえるまでには時間がかかります。顔なじみになり、心を開いてくださるところまで持っていくのが仕事です」と、千田さん。
森さんは言う。「どんなシステムができても、一人一人の人間性をみて、きめ細かく運用するのは私たち。人間関係を密にして、しっかり見守ってあげることで高齢者は安心できると思います」(共同通信 辻村達哉) (2008/09/16)
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「物忘れ、ありますか」「あるね。何か持って来なきゃならんのに、どこに置いたかな、そういうことが多いね」
耳が少し遠いという男性(72)に精神科医の本多修さん(44)は大きな声で質問を続けた。居間のテーブルを挟んで向かい合う二人を、妻(68)や長女(34)が見守る。
▽もの忘れ相談
宮城県白石市。仙台市の南にあり、人口約39000人。4分の1は65歳以上の高齢者だ。市内の病院に勤める本多さんは、8年前から同市の「もの忘れ相談」を一人で担当する。月1回、市の健康センターや相手の家で相談に応じる。
近所への配慮もあり、本多さんは白衣ではなくポロシャツ姿。手本を見ながら立方体を描くといった認知機能の検査は30分ほどで終わった。結果は「中等度の認知症」。
「デイサービスに行った方がいいですよ。頭の血のめぐりが良くなりますから」と本多さん。家族が「頑固だ」という男性は素直にうなずいた。
「もっと早く診てもらったらよかった。本当にありがたいです。子供が小さく、父を病院に連れて行くのが大変なので」。長女はほっとした表情を見せた。
▽大きな温度差
厚生労働省は認知症の高齢者が今後急増し、2015年に250万人、40年に385万人に達すると予測する。
患者と家族が良好な生活を送れるかどうかは、早期発見が鍵を握る。しかし実際には、なかなか診断に結び付かない。
「年だから仕方ない、で済ませている人もいる。普通の人にとって精神科はまだまだ敷居が高いし、認知症の自覚がない人や妄想の出ている人を病院に連れてくるのは難しい」と本多さん。
家族が介護で疲れ果てているのに、認知症でのかかりつけ医がいないため、介護サービスが利用できないこともある。
三重県の開業医は「家族が認知症になったと近所に知られたくないので、病院に連れてこない人がいる。認知症を診られる医師も少ない。地域によって認知症に対する温度差は大きい」と語る。
▽ボランティア
一人で暮らす高齢者の認知症はどうすればいいのだろう。東京都足立区には、ボランティアの「あんしん協力員」と民生委員、商店などの協力機関が高齢者や家族を支える「あんしんネットワーク」という仕組みがある。区内の一人暮らしの高齢者は約36000人で増加中。「80、90になっても施設に入りたくないという方がいる。場所や人間関係に安心感があるんでしょう」と民生委員の森春枝さん(64)。
協力員は300人余り。8年目の千田好栄さん(70)はほぼ毎日、高齢者の家を自転車で回る。「お元気ですか」「困りごとはないですか」と声を掛けて話し相手にもなり、認知症に気付くと地域包括支援センターに連絡する。「始終、見守りをしてあげるんです」
夫の死後、金融機関の手続きができていなかった女性を見つけ、支援につなげたり、認知症以外の病気に気付き、治療を受けられるようにしたりといった体験もした。
「怖い世の中ですから、高齢者の方に受け入れてもらえるまでには時間がかかります。顔なじみになり、心を開いてくださるところまで持っていくのが仕事です」と、千田さん。
森さんは言う。「どんなシステムができても、一人一人の人間性をみて、きめ細かく運用するのは私たち。人間関係を密にして、しっかり見守ってあげることで高齢者は安心できると思います」(共同通信 辻村達哉) (2008/09/16)


