
関節リウマチ、抗体で改善
免疫関与のIL6阻害
大阪大と中外製薬が開発
▽多様な生理作用
IL6は岸本教授らが1970年代に、免疫の応答に関係する物質として発見した。免疫細胞のリンパ球やマクロファージが分泌し、細胞の分化、増殖など多様な生理作用を持つ物質として知られている。
IL6が作用を発揮するには、細胞表面の受容体に結合する必要がある。同教授らは80年代に受容体の構造を解明。さらに、心臓の中に良性の腫瘍(しゅよう)ができて、心不全や関節の腫れ、貧血が起きる心房内粘液腫の患部には、大量のIL6があることを明らかにした。
岸本教授は「IL6が非常に多くあることで関節の腫れなどの炎症が生じていると分かり、IL6の働きを止めれば病気の治療につながると考えました」と説明する。
関節リウマチは、免疫システムが自分の体を攻撃する全身性の自己免疫疾患。炎症により関節が腫れて痛み、骨や関節が破壊されて変形する。40代、50代の女性を中心に発症、患者数は人口の0.4―0.5%とされ、国内では推定約33万人が治療を受けているとのデータもある。
▽結合をブロック
既存薬には、関節リウマチに関与する別の物質の働きや産出を抑制するものなどがある。
岸本教授らが作ったのは、関節の細胞などにある受容体に取り付き、IL6が結合するのをブロックする抗体。中外製薬と共同で、遺伝子組み換え技術によって開発、炎症反応で中心的役割を果たすIL6を標的にした初の関節リウマチ治療薬という。
有効性と安全性を調べるため、この抗体を関節リウマチ患者61人に、4週間に1回、点滴で投与する半年間の臨床試験を実施。痛みや腫れの関節数、日常生活での動作などから改善率をみる米リウマチ学会の基準を用い評価したところ、約30%の患者で、症状がほとんど消える「70%改善率」を達成、50%改善率は約半数が満たした。
▽バックアップ
一方、61人のうち56人(約92%)で鼻咽頭(いんとう)炎や皮膚の発疹(ほっしん)、下痢などが起き「感染症に弱くなる可能性があるので、医師の管理のもとで使うことが必要。感染症にかかっている患者には、投与が難しいこともあります」と岸本教授。
この抗体は、キャッスルマン病の治療薬アクテムラ(一般名トシリズマブ)として既に承認されており、中外製薬は関節リウマチと若年性特発性関節炎も適応症になるよう、昨年4月に厚労省に申請した。
世界約40カ国での臨床試験の結果をもとに、欧米での承認申請も予定している。
大阪大学長退任後の2003年に研究現場に復帰した岸本教授。「関節や骨が破壊される前の早期に投与することが大切です。IL6はいろいろな病気にかかわっており、関節リウマチを含め発症の詳しい仕組みや原因を解明する鍵を握っています。さらに研究を進めたい」と話している。


