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作家の乙武洋匡さん

自己肯定感育んで 恵まれた教育に“恩返し”

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        乙武洋匡さん

 記録的なベストセラーとなった著書「五体不満足」で知られる作家の乙武洋匡さん(34)は2007年から3年間、小学校教諭として勤務。その経験を生かし、今春からは、東京都練馬区にオープンする保育園の運営に携わる。子どもたちとの関わりを通じて「重い障害を持つ自分に自己肯定感を育んでくれた周りの大人たちへの恩返しをしたい」と考えている。

 ▽愛情の恩返し
 生まれつき両腕両脚がない生後1カ月のわが子と初めて対面した時、ショックで倒れるのではないかという周囲の心配をよそに、母が口にした言葉は「かわいい」だった―。このエピソードに象徴される両親の子育てが、乙武さんの教育観の原点となった。
 「父も母も、僕の障害に関わらず、目いっぱい愛情を注いでくれました。これだけ重い障害を持ちながら、卑屈になることなく、自己肯定感を持って育つことができたのは、愛され、大切にされていることを、両親をはじめ、周囲の大人たちがいつも感じさせてくれていたからだと思います」

 教育に携わる決意したのは、03~04年に相次いで起きた、小中学生による殺人事件がきっかけだった。
 「事件を起こした子どももかわいそう、という気持ちを禁じ得なかった。人殺しになろうと思って生まれてくる子なんていない。幸せになりたいと願って生まれてきた彼らが出していたサインに、周りの大人は気づいてあげられなかったのか。いかに僕が周囲の大人に恵まれていたかをあらためて感じて、今度は自分が、大人の立場で、恩返しをするべきではないかと思いました」

 ▽小学校教諭として
 当時はスポーツライターとして活躍していたが、大学に再入学して小学校教諭の免許を取得し、07年4月、都内の小学校に赴任。「自己肯定感を育む教育」を実践するとともに、保護者にもその大切さを訴えた。
 「4年生の『二分の一成人式』という授業で、保護者に用意してもらった手紙を読んだ子どもたちが『こんなに大切に思ってくれてるの知らなかった』と号泣するんです。親は、子どもを愛しているのは当たり前と思って伝えないけれど、子どもはメッセージを欲している。恥ずかしがらず、面倒くさがらずに言葉や態度で示してほしい」

 放課後は保護者に電話をするのを日課にした。
 「普通、学校から電話が掛かってくるのは『何かやらかした時』かもしれませんが、僕は、学校で子どもが何かをがんばった時、ほめてあげたいことがあった時に電話していました。苦手な逆上がりを一生懸命練習したとか、引っ込み思案な子が委員に立候補したとか。結果が出たことは通知表に書くことができる。でも、結果に結び付かなかったがんばりを保護者が知らないままではもったいない」

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 開園を待つ保育園を訪れた乙武さん=3月、東京都練馬区(オフィスユニーク提供)

 ▽新たな夢へ
 小学校教諭として3年間の契約期間が終わるころ、新たな夢が生まれた。
 「教師をしていて気づいたのは、一番大事なのは家庭だということでした。学校でいくら教師が奮闘しても、家庭が安定しないと、落ち着いて勉強することもできない。もっと家庭に近い位置にある教育機関で子どもたちのために力を尽くしたいと思っていたころ、保育園の開園を目指す友人と出会い、一緒にやろうということになりました」

 4月にオープンする保育園は、隣りに一般の人も利用できるカフェを設けるなど、地域住民との交流を促す仕掛けが特徴だ。
 「今の子どもたちは、成長過程で接する大人に偏りがあるのではないか。もっと幅広い層の大人たちと接することで豊かな人間性を育んでいけたら」

 自身も08年に長男、10年に次男が誕生した。
 「長男は1歳半のころから、自然に、僕がトイレに行ったり、ひげをそったりするのを手伝ってくれるようになりました。オシメを替えたり、風呂に入れてあげたりしてあげられないことに無力感を持ったこともあったけど、父親がこういう体だから、そんなやさしい気持ちを持つようになったのだとしたら、それも一つの子育てかなと思います」

 現在3歳になった長男は父親譲りのサッカー好き。休日、公園で一緒にボールを追い掛けるのが楽しみという。



乙武洋匡(おとたけ・ひろただ)さん の略歴

 1976年東京都生まれ。大学在学中の98年、障害を持つ自身の経験をユーモラスに綴った「五体不満足」が500万部を超すベストセラーになる。大学卒業後、スポーツライターを経て、2005年、東京都新宿区教育委員会の非常勤職員に就任。07年に小学校教諭二種免許状を取得。同4月から10年3月まで杉並区立杉並第四小学校教諭として教壇に立つ。その経験を基にした初の小説「だいじょうぶ3組」を10年9月に出版した。


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