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マタニティ写真の高田奈付子さん

みんな「ここ」にいた 妊娠中のお腹を写真に

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     高田奈付子さん

 昨年末、1冊の絵本が発売された。タイトルは「きみのいたばしょ」。絵本というより、写真集のようなデザイン。臨月の女性をモデルにした約30枚のモノクロ写真が印象的だ。写真を提供したのは、東京都世田谷区のマタニティフォト専門スタジオ「ネーブル」。代表の高田奈付子さん(30)は「反抗期の子どもも、仕事で疲れたおじさんも、みんなお母さんのお腹の中にいた。この当たり前のような奇跡を思い出して、あたたかい気持ちになってほしい」と話している。

 ▽一人一人違う美しさ
 閑静な住宅街の一角にある小さなスタジオ。黒い幕を背景に、大きなお腹をあらわにして照明を浴びる女性の姿は、息をのむほど美しかった。
 「臨月の女性の素肌を見る機会なんて、なかなかないでしょう。こうして見ると、なんてきれいなんだろうと思います。命を宿した女性特有の、光を弾き返すような美しさです」

 「赤ちゃんの性別は?」「今は寝てるのかな?」―。女性カメラマンの問いかけに、緊張気味だった表情もリラックスしていく。撮影を終えた女性は「スタジオの雰囲気が神秘的で、いい記念になった。産まれた子供と一緒にまた撮りにきたい」と満足そうだ。
 「これまで、多くの妊婦さんの撮影に立ち会ってきましたが、お腹の形は1人として同じじゃない。産まれる前から確かな個性があることを実感しています」

 ▽命のループを感じて
 スタジオを開いたきっかけは、2007年10月の長男出産だった。
 「妊娠中、雑誌に載っていた妊婦のヌード写真を見たのがそもそものきっかけでしたが『自分も撮っておきたかった』と強く思ったのは出産してから。長く感じていた妊娠期間も、終わってみれば、たったの10カ月。その時間がとても貴重に思えました」

 妊娠期間を振り返るうちに、自分を産んでくれた母に思いが至った。
 「わたしも母のお腹の中にいたはずだけど、現実感がない。妊娠中の母の写真があれば見てみたかった。親になって、母から子につながる命のループを感じたからこそ、ほかの女性にも、妊娠中の写真を残してほしいと思いました」

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 昨年12月の次男出産前にスタジオで撮影した家族写真(高田さん提供)

 妊娠中の女性専門の写真スタジオをつくろう―。自身に本格的な写真の経験はないため、知人を通じて協力してくれるプロのカメラマンをさがし、自宅の一室をスタジオに改造して、出産から7カ月後にオープン。スタッフはすべて女性。被写体の気持ちを際立たせるため、撮影はモノクロにこだわった。
 「撮影に立ち会ってみると、胎動を感じた時の幸福感や『元気でうまれてくれるだけでいい』と願っていた気持ちが蘇ります。妊娠中のさまざまな気持ちを記録した写真は、将来、子育てに疲れた時はもちろん、おばあちゃんになった時にも振り返ることができる、大切な宝物になると思います」

 ▽当たり前のような奇跡
 当初は月に数件の依頼しかなかったが、口コミで人気は拡大。出産後に再び家族で撮影に訪れる女性も増えたため、09年10月には、スタジオ名を、出産を司る女神に由来する「イクシェル」から、英語で「へそ」を意味する「ネーブル」に改称した。
 「おへそは、誰もが持っている、命がつながっていた証。人が生まれるという、一見当たり前のような奇跡の象徴です」

 撮りためた写真を使った絵本の出版には、その「奇跡」を、多くの人に感じてほしいという願いが込められている。
 「日々、耳を覆いたくなるような事件のニュースが多いですが、こうした事件の当事者たちも、みんな、かつてはお母さんのお腹の中で暖められていた。そのことがふと心に浮かべば、暖かい気持ちになって、つらいことも乗り越えられるかも」

 絵本の出版日は、偶然にも、2度目の出産と重なった。育児と仕事を両立する多忙な日々が続くが「子どものせいで何かを我慢したなんて言ったら子どもに失礼。あなたたちがいたから、今があるのよ、と言っていたい」―。その笑顔は、妊娠中の女性たちに負けないくらい輝いていた。



高田奈付子(たかだ・なつこ)さんの略歴

 1980年神奈川県生まれ。夫とデザイン企画会社を経営していた2007年10月に長男出産。08年5月、東京都世田谷区の自宅でマタニティフォト専門スタジオ「イクシェル」をオープン。その後「ネーブル」に改称。10年6月、自宅近くにスタジオを移転。同12月、次男出産。


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