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NPO法人代表の原貴紀さん

子どもの笑顔が原動力 ひとり親支援に使命感

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原貴紀さん=川崎市高津区

 ひとり親の支援をしている特定非営利活動法人(NPO法人)「しんふぁ支援協会」の代表、原貴紀さん(36)は、自身も瑠稀也君(11)を2歳の時から一人で育ててきた。インターネットの会員制サイトで同じひとり親に何げなく呼び掛けたのがきっかけで、驚くほどの速さで仲間が広がり、子どもを笑顔にするため使命感を持って取り組んでいる。

 ▽イメージ変えたい
 2001年に妻と離婚、原さんが2歳だった瑠稀也君を育てることになった。それまでは週末の休みの時に遊園地や動物園には連れて行っていたが、どちらかと言えば仕事人間で熱心に育児にかかわってきたわけではなかった。
 「最初は親に一人で育てることを反対されたこともあり、実家に帰るのは嫌だった。頼りたくないと思ったし、預けると自分が甘えて、駄目になるような気がしたんです」
 「離婚はしましたが、瑠稀也の母親であることには変わりないから、子どもは母親と自由に連絡を取ったり、会ったりしています。今の距離感がちょうどいいのかもしれないですね」

 営業の仕事をするため福岡県から愛知県へ。預けていた保育園が終わると、瑠稀也君を抱っこしながら夜に営業をしたこともあった。料理は以前から好きで、家事も苦にはならなかったという。
 「子どもと一緒にいる時間は絶対に減らせない。自分が稼がなきゃ生活できないので、限られた時間の中で成果を残すよう必死にやりました」

 愛知での仕事が一段落し東京へ。営業を引き続きやっていたが、これまでの仕事で培った人脈を生かしてイベントのプロデュースなどをする会社を始めた。
 07年9月に会員制サイト「ミクシィ」の中で「Happy!シンママ&シンパパ倶楽部(しんふぁ)」というコミュニティーを始めたのが、ひとり親の家庭とかかわるきっかけになった。
 「僕と同じひとり親はなかなかバーベキューなどのイベントはできない。でもみんなが集まって、子どもも一緒なら瑠稀也も楽しめるんじゃないかと最初は軽い気持ちで呼び掛けたんです」
 「しんふぁとは、シングルファミリーを略した造語です。母子家庭・父子家庭との呼び方は少し重い、暗い印象があるので、温かくて、やわらかい語感の名前をと思い、名付けました」

 しんふぁの登録者は2年半で約4500人に増え、地域ごとに24支部ある。しんふぁ以外にかかわっているミクシィ内の「一人親」というコミュニティーも含めれば、延べ約3万人のひとり親とその子どもとつながっているという。それぞれの支部で弁当を持ち寄って公園でピクニックをしたり、関西支部では米を作る農業体験も。昨年のクリスマスパーティーにはひとり親の親子約400人が東京・新宿に集まった。とにかく楽しめるようにアイデアを出し合っている。
 「何よりも子どもを中心に考えること。子どもが楽しめれば、親も参加してくる。そこで親もかかわるイベントをやれば親同士もつながるんです。逆に小学生だけで東京タワーへ行って、自分たちで参加費の使い道を考えて遊ぶイベントは子どもも自信になる。親子2人でやったことがあれば、思い出話にもなるし、親子のきずなにもなる。だからいろいろなことができるんですよ」

 今年8月にはひとり親と子どもたちで富士山に登る。
 「シングルだと親子で富士山に登るってなかなかできないから、提案したら1回登ってみたかったという人が多かったんで、じゃあみんなで登ろうと。ごみ拾いもする予定で、まじめなことを楽しいことに挟むと子どもにもすんなり伝わるんですよ」

 ひとり親向けのポータルサイトも作成中で、提携する企業には食品、洋服などの商品を安く提供してもらう。軌道に乗ればサイトを管理する上でシングルマザーたちの就労支援にしたいと考えている。自分たちでしんふぁの活動を続けていくのが理想だ。
 「もっと大きく活動するためには、より認知されることや寄付も必要。でもやっぱり自分たちのことだから、自分たちの力でできるようになりたい。それが子どもたちに平等にチャンスを与えられるステップになる」
 「子どもたちの喜ぶ顔を見ると、達成感、充実感があります。それが原動力だしすべて。子どもたちには『たかっきー』と呼ばれています。人数が多いイベントでは僕はすべての顔と名前を覚えられない時もありますが、子どもたちが僕を覚えてくれて、街で会った時に『あ、たかっきーだ』と駆け寄ってきてくれる。そりゃ、うれしいし、かわいいですね」

 ▽背中を押す
 多くのひとり親に接する中で、日常に疲れ、楽しみや笑顔を忘れてしまったような表情に出会うこともある。
 「パートナーがいないから役割と負担は多いのは当たり前で、時間は足りないし、体力も続かない。自分のことに気が回らなくて、おしゃれやメークの時間もない。だからこそ気持ちのどこかに余裕をつくらないと、何か想定外のことが一つ起きると生活すべてが崩れてしまったりする」
 「僕もポジティブ人間だと自認していますが、生活や収入のことで悩み、落ち込むこともあります。でもそこからやろうと切り替えられるのは自分自身。それができるかできないかだと思うんです。一歩でもいいから何かやっていれば、先が見えてくる。しんふぁがそんなきっかけやよりどころにしたいし、背中を押してあげたい」

 落ち込んでいるひとり親に出会った時は、何とかしてしんふぁのイベントに参加してもらう。
 「最初は緊張するかもしれないけど、少しでも笑ったら『今笑ったでしょ?子どもの笑顔を見てよ』と話し掛けて、心を解きほぐしていくんです。その日が終わったら、数日後には心が現実に引き戻されるから、その前にもう一回、イベントで少しでも楽しんだことなどを話してフォローして、気持ちに余裕が持てるようにするんです」
 
 

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スノーボードの大会で優勝し、賞状を持つ瑠稀也君=長野県佐久市(原さん提供)

 瑠稀也君の心臓には大動脈弁狭窄症などの重い病気があった。昨年3月に福岡で心臓の大手術を受けた。手術当日には大阪の父子家庭の親子が自転車で約3万羽の折り鶴やメッセージを届けてくれた。原さんに内緒で全国のしんふぁの仲間に呼び掛けていたものだった。
 「死と直面するような不安でどうしようもなかった時に、みんなの気持ちやパワーが届いて涙が止まらなかった。瑠稀也の頑張りで、親が子育てをしているのではなく、子どもが親育てをしてくれているんだと心から思いました」

 手術は成功し瑠稀也君はスノーボードに夢中だ。今年は原さんと同じ2級を取得し、スキー場が主催する大会の小学生の部で初めて優勝もした。将来は冬季五輪に出て金メダルを取り、同じ病気の人やひとり親、子どもを勇気づけるのが夢だ。
 「自分が1級を取れば教えることができるので、何とか取ってしんふぁの子どもを教えたいです。まだ瑠稀也には負けられないですし。親子でバカをやって笑い合うのはすごい大事なんですけど、スノーボードはかなり厳しく教えています」

 昨年11月、父子世帯の公的生活支援・自立支援などを目指す「全国父子家庭支援団体連絡会(現在は全国父子家庭支援連絡会)」を設立した際の記者会見。あえて茶髪にして、瑠稀也君と一緒に理事として出席した。
 「ひとり親は昔からいて、上の世代の人もずっとやってきた経験もあるわけだけど、経験がまだない若いひとり親でも一生懸命やっている人はいっぱいいる。そんな若いひとり親をうまく引っ張り上げたいんです。だから一人くらいまじめばっかりな感じではない人がいたほうがいいんじゃないかと思ったんですよ」
 「すべてのひとり親の子どもたちが平等にチャンスを得る。それが僕の使命です。瑠稀也にもよく話していて、彼も理解して協力してもらっています」。
親子で使命を果たそうと、今後も助け合う。(共同通信デジタル編集部、10年4月27日配信)
 

 ▽原さんの1日
 07:00 起床。朝食の準備
 07:30 朝食。身支度
 07:50 瑠稀也君が小学校へ
 09:00 家事など
 10:00 仕事や打ち合わせ
 17:30 帰宅、瑠稀也君のスノーボードを見に行ったり
 22:00 夕食
 23:00 瑠稀也君が就寝。仕事や日記を付けたり、メールの返信
 03:00 就寝



原貴紀(はら・たかき)さんの略歴

1973年、鹿児島県生まれ。2001年に離婚、シングルファーザーになり、瑠稀也(るきや)君と暮らす。08年にひとり親のコミュニティーサイト「Happy!シンママ&シンパパ倶楽部」を作り、09年にNPO法人「しんふぁ支援協会」を設立、瑠稀也君もこども理事。個展を開く書道家でもあり、収益はすべて活動に寄付している。原さんのブログはhttp://ameblo.jp/takaki-hara/


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