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子育てさがし 共同通信がママ・パパ・家族をつづった子育て物語です。

「くらすこと」の藤田ゆみさん

人とつながるきっかけを 当たり前の思い大切に

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藤田ゆみさん=東京都杉並区

 オーガニックな暮らしやゆったりとした子育てをテーマに活動する「くらすこと」主宰の藤田ゆみさん(36)は、仕事と子どもや家族の時間を大切にするため、試行錯誤しながら自らの生活サイクルを模索してきた。今年からは地域のさまざまな世代の人がつながって、子どもを育てられるような拠点をつくろうと新たな活動を始める。

 ▽動物的な感覚
 高等技術専門校でホームヘルパーの資格を取り、特別養護老人ホームで寮母として働いた後、出版社に転職。カルチャー雑誌の副編集長などを務め、旅やアート、ファッションなどさまざまな企画を手掛けたが、妊娠が分かると、当時勤めていた会社では産休を取ることが難しく退職した。
 「社会福祉か芸術系の仕事に携わりたいと思っていて、編集の仕事は若いうちにしか始められないので、やってみたかった。退職することにはなりましたが、最先端の文化に触れ、流行やファッションで消費を重ねる風潮に疑問を持ち始めたころで、忙しさに疲れたこともあり、一度穏やかな生活になろうかと考えました」
 
 2003年3月に長男(6)が生まれて、寝たいけれど授乳をしなければならなく、睡眠がとぎれとぎれになったりするなど想像以上に大変だった。
 「子どもはかわいいけど、子育ては自分の思い通りにいかないことを実感しました。子どもはわたしとは違う人で、自分のペースもあるし、意思もある。頭では分かっていてもなかなかうまくいかなかったです」

 悩みながらも、自分が食べたものが母乳になり、それを飲んで子どもが大きくなるのを目の当たりにした。
 「自分のおっぱいで、人間の心と体をつくるという当たり前のことに気付いたり、妊娠から育児は人間の持つ動物的な感覚にたくさん触れる時期だから、自然なことをすんなり受け止めることができた」

 食べることに興味が出て自然食の勉強会などに参加したが、何となく違和感があった。
 「まだまだ当時は自然食やオーガニックというと、体にはよさそうだけどおいしそうではなかったり、『あれはだめ』とか『これはだめ』などストイックな母親が多くて、単純に楽しそうじゃないなと思いました。そんなことがあって、これは身体にいいからとか環境にいいからとか、頭で理解して実践するよりも、もっと楽しみながら自然に暮らしに取り入れてもらえるようなきっかけを多くの人につくりたいと思うようになりました」

 ▽試行錯誤の生活
 05年1月から始めた「くらすこと」は、ライフスタイル雑誌への執筆、料理や生活雑貨を作るワークショップなどを手掛ける。07年12月からは、福祉作業所と協力して作ったアクリルたわしや子ども用のスカートなどの独自商品や自分が暮らしの中で気に入った食器や雑貨を通信販売する「“くらすこと”の店」もスタートさせた。
 「福祉作業所で売っているものには、なかなかほしいなと思うデザインのものがないことが多かった。そこでデザインを外部の人に頼んで、協力していいものを作って販売をするお手伝いをしたい、というのが最初にあって、自分がいいなと思うものと同列に扱うお店を始めました。雑貨が大好きでお店をしたかったというわけではないんですよ」
 
 長男を保育園に預けて「くらすこと」を始めたが、子どもと一緒に過ごす時間を大切にしたい思いが強まった。07年1月に長女(3)が生まれると、夫が会社勤めを辞めて独立し、自宅でウェブデザインの仕事をするようになった。家族が同じ空間にいる時間は増えたが、子どもと一緒の時間と仕事の時間を切り分けるのが難しく、それぞれしっかり確保するため午後6時に家族みんなで寝て、夫婦で深夜に起きて朝まで仕事をするなど、生活サイクルが大きく変わった。
 「いつもいる場所だから子どもの気持ちが落ち着くので、自宅で一緒に過ごしたいと思うようになりました。でも子どもがある程度大きくなるまでやりたいことを我慢したくはなかったし、自分を発揮したいという欲求もあって、私の母親と一緒に暮らすようになるまでの2年ほどこういう生活をしましたが、やっぱり大変でした」

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自宅でゆったりとくつろぐ藤田さんと子どもたち=東京都杉並区

 そんな経験もあり、今年からスタッフが子連れで出勤し、子どもたちは2階の“もう一つのおうち”で過ごすような場所をつくろうと考えている。みんなでみんなの子どもをかわいがって育てて、悪いことをしたら怒る。ご飯やおやつの時間は交代で手の空いた母親が一緒に過ごす。地元や有機栽培の食べ物を使って、手ごろな値段でしっかりとした量が食べられる食堂を開き、産後の母親、一人暮らしの高齢者への弁当の宅配もする。逆に地域の高齢者に梅干しやみそ造りを教えてもらう講座を企画するなど、法人格を取得して地域でつながる拠点にする構想だ。
 「イメージは、昔農家のお母さんが、畑の傍らに揺りかごを置いて畑を耕したような、子どもの存在を感じながら仕事ができる環境です。子どもはいろいろな人にかわいがられるのも大事だし、子育て中の母親も高齢者も仕事を通して社会にかかわれるように、人とつながり、手をつなぐきっかけになる場所をつくりたい。母親の近場の外出って買い物か児童館がほとんどなので、ベビーカーを押しながらお弁当を届けることで、社会と気軽につながるきっかけになればいいじゃないですか」

 昨年春には次男が生まれた。家族は一層にぎやかに楽しくなったが、子どもが3人いると目の前のことで精いっぱいになってしまう。そんな中で忘れがちな思いを確認する時間を夜明けに設けている。
 「子どもが生まれて朝型になり、1日が始まる夜明けが何となく好きになりました。目の前のことばかりだと、どうしても楽な方や後ろ向きになりがちだから、公園で家族がのんびりしている時に感じた幸せな気持ちを思い浮かべたり、仕事でこれをやりたいために、今はこのことをやっているとか。家族や仕事で将来したいと思っていることの確認ですね」
 「身近な人や家族の大切さ、子どもと一緒に暮らす時間の素晴らしさや尊さ、思いやりを持って人とつながる大事さ。そういう当たり前の思いは、子どもに言ってそうなるものではなく、やっぱり自分がしていることを見て覚えると思うんです」。自分が伝えたいこと、大事にしたいことを、体現することで3人の子どもに教えたいと思っている。新しくつくる活動の拠点はそんな価値観を共有する場になる。(共同通信デジタル編集部、10年2月9日配信)

 
 ▽藤田さんの1日
 03:30 起床。メールの返信や仕事など
 07:00 子どもたちが起床。家族で朝食
 08:00 長男が小学校へ登校
 08:45 長女を保育園へ送る
 09:45 家へ戻り仕事開始。藤田さんの母親が次男を見てくれ、家事もしつつ
 16:00 長女の迎え
 17:00 長男が帰宅。夕食
 18:30 長男の宿題をみる、子どもたちと遊ぶ、入浴など
 20:30 子どもに本の読み聞かせのあと、一緒に就寝



藤田(ふじた)ゆみさんの略歴

 1973年、大阪府生まれ。ホームヘルパーの資格を取り、特別養護老人ホームに勤務後、カルチャー雑誌などの編集を約6年経験。2003年に長男を出産し、05年、オーガニックな生活やスローな子育てをテーマとした「くらすこと」の活動を始める。


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