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子育てさがし 共同通信がママ・パパ・家族をつづった子育て物語です。

日本HPの一ノ関陽介さん

妻と入れ替わり育休 会社も働き方尊重

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一ノ関陽介さん=東京都杉並区

 総合IT大手「日本ヒューレット・パッカード(HP)」の男性社員が育児休業を取得した割合は厚生労働省の調査の4倍以上の約5%。取得率が上がったのは2年前からで会社側の新たな取り組みがあった。昨年10月に長女が生まれた一ノ関陽介さん(29)は、同い年の妻の職場復帰と入れ替わりで今年1月から3カ月の育児休業を取得、子どもとの時間を楽しんでいる。
 
 ▽家事は平等
 学生時代から交際を始め2005年10月に結婚した2人の間では、子どもが生まれる前から「家事は平等」がモットー。お互いの得意分野はあるが、料理も洗濯も掃除も一ノ関さんは苦もなくやっていた。
 「早く帰った方が家事をやるというのが暗黙の了解。僕に飲み会があるときは、夕食のカレーを朝のうちに作ったり。そういうことをした方が気兼ねなく飲めますから。両親も共働きで平日に父親が料理することが結構あったので、家事をすることに違和感はなかったです」

 妊娠が分かって2人でスケジュールを話し合い、3カ月の育児休業を取ることを昨年3月ごろに上司へ伝えた。入れ替わりに職場復帰する妻の同僚は一ノ関さんの育休に驚いたそうだが、一ノ関さんは職場で「おめでとう、頑張れよ」と勇気づけられた。
 「育休を取りたいと漠然とは考えていたので、どうせ休むなら月単位で休んで、会社員であることを一瞬忘れてみるのもいいかなと思っていました。以前から軽いノリで『子どもが生まれたら休みたいんですよね』とは言ってキャラづくりはしていましたね」
 一ノ関さんから育休の意向を聞いた上司は「育児の大変さや家庭内での話を本人とすることができたし、心構え・準備など業務以外での多くのことをアドバイスもでき、うれしく思えました。復帰後も、仕事の軽減はないが、仕事と育児を両立できるよう職場で支援することが重要だと考えています」

 ▽社員の意見から新制度
 08年度の厚生労働省の雇用均等基本調査によると、07年度中に妻が出産した民間企業に勤務する男性のうち、育児休業を取得した人の割合は1・23%にとどまっているが、日本HPは5・07%(08年度)という。07年度は3・43%でそれ以前は特筆する数字ではなかった。取得率が伸びたのは07年5月に社員の意見を基にした短期の育休制度を独自につくってからだ。
 短期育休制度の期間は2週間から20日未満。取得日の1カ月前までに上司に伝えれば認められ、休業中の基本給は会社側が100%負担する。会社側も説明会をこれまでに3回開いたり、上司向けの対応マニュアルを作ったりして普及に努め、育休を取得する男性の多くは短期制度を使っている。3カ月の育児休業を取った一ノ関さんは、国の育児休業給付で基本給の5割が支給される。
 「説明会の参加者は男女半々で、男性の関心が思ったより高かったです。数カ月から半年のプロジェクト参加型の働き方をしている社員が多いので、仕事の区切りがつきやすい面もあるほか、上司と一緒に考えられる風土もあります。また外資系ということもあり、米国や欧州のワークライフバランスが進んでいる国の情報に触れています。男性の育休取得がより増えて一般的になれば、復帰する際のキャリアの不安も解消されるのではないでしょうか」と育休制度の担当者。

 育休の短期、長期にかかわらず社員から要望があれば、社内のメールを見るためのパソコンを貸与するなど細かく対応。復職前には面談して働き方の希望などが変わっていないか、家庭事情などを話し合うようにしている。育休を取得する社員自身には仕事をフォローしてもらえるような職場での環境づくりが必要になるし、時間のコントロールをしっかりする責任はある。
 昨年6月に長男が生まれ、短期の育児休業を取得した男性社員(33)は「使い勝手がいい制度だと思う。2週間でも休むとだいたいの家事や育児のことはできるようになるので、半日ぐらい子どもを1人で見ることができて自信になる。復職してからも家に帰る時にこの時間ならこうしてほしいだろうなと自主的に考えることもでき、スムーズに育児にかかわっています」

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長女のおむつ替えをする育休中の一ノ関さん=東京都東村山市

 ▽長女の成長に共感
 一ノ関さんは1月から日中は長女と2人きりになった。育休を取る前から、風呂に入れたり、おむつ替えもしていたし、妻から何が大変だったか聞いたり、頭の中でシミュレーションしていたこともあり、順調に始まった。
 「妻が風呂に入っていて、ミルクも安易にあげられない時なんかは授乳できないのがもどかしく感じたりします。会社に行っていた時は家を出るのが、後ろ髪引かれる思いだったので、一緒にいれるのはやっぱり楽しい。何度も笑顔を見ちゃうと親ばかになっちゃいそうですけど」

 電車とバスを乗り継ぎ約30分かけて、妻の会社近くのレストランまで行って、家族3人で昼食を食べた。授乳もできた妻はすっきりした表情で仕事に戻った。妻が帰ってくると、その日のことを話して長女の成長を共感しあう。家族でいいバランスが取れていると感じている。
 「妻も復帰直後で何かと気疲れする中、家族と会えたのはとてもよかったそうです。育休中の母親や主婦の人が子どもを連れて、平日は夜遅くにしか会えないだんなさんと職場近くで家族一緒にランチをするのもいいんじゃないですか。すごく家事・育児の気分転換になりますし、おすすめです」

 4月からは認証保育園に入れることが決まっていて、再び共働きになる。それまでは社用パソコンで会社のメールを見て仕事の動きを把握でき、月に1度の職場の会議には出席する予定だ。復帰後も「こんなプロジェクトをやってみない?」と新しいことをさせてもらえる予定で、再び仕事を通じて成長できることを楽しみにしている。
 「女性も男性も同じ仕事をしていて、女性はもちろん育休を取るけど、男性が取る時は特別扱いというのに違和感がある。パートナーの男性が取れば、女性の育休は短くなるし有益なこともあると思う。僕は環境に恵まれているのかもしれませんが、普通に取得できたので、子どもに何を教えたいかなどじっくり考えながら、普通に復帰できればそれでいいですね」

 一方で向上心も忘れない。余裕ができれば、育休中に仕事関連や英語の勉強をする計画も立てている。
 「復帰してから仕事ぶりが駄目と言われるのは悔しいですよ。仕事は休んでいたけど成長したなと思われたい。そうすれば、将来2人目が生まれた時に、社内で再び育休を取る背中をまた押してくれるんじゃないかと思う」。自分が選んだ働き方を会社は尊重する。意志を尊重されるだけに責任は重いが、仕事へのモチベーションにもつながるという。(共同通信デジタル編集部、10年2月2日配信)


 ▽育休中の一ノ関さんの1日
 07:30 起床。出勤前の妻が長女に授乳
 08:00 妻を見送り、朝食
 10:00 長女にミルクをあげ、機嫌がいい間に掃除や洗濯
 12:00 昼食
 13:00 長女にミルクをあげる
 13:30 天気がいい日は散歩や買い物などの外出
 16:00 長女にミルクをあげる
 16:30 一緒に遊ぶ
 18:00 夕食の準備
 19:00 妻帰宅
 19:30 夕食
 21:00 長女を風呂に入れる
 21:30 長女の寝かしつけ、一緒に寝てしまうことも
 25:00 就寝



一ノ関陽介(いちのせき・ようすけ)さんの略歴

 1980年、東京都生まれ。大学卒業後、2002年に日本HPに入社。05年に妻と結婚、09年に長女が生まれる。妻の職場復帰に伴い、今年1月から3カ月、育児休業を取得中。


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