学生パパの西村創一朗さん
子どもの成長に負けない 妻方に同居し、就職活動

学生にも育児について考える機会を提供しようと取り組む学生組織「ファザーリング・ジャパン・スチューデンツ(FJS)」の代表、西村創一朗さん(21)は、首都大学東京の3年生で、長男恭一ちゃん(1)のパパ。妊娠が分かってから、妻の実家に同居し、物心両面のサポートを受ける。日々成長する子どもに負けないよう自分に言い聞かせながら、就職活動など忙しい日々を送る。
妊娠が分かったのは、大学に入学して半年たっていない2007年9月。高校2年で交際を始め、当時はまだ彼女だった妻(21)は、妊娠を示す検査薬を持ったまま固まっていた。二人とも思いも寄らない形でパパ、ママになることに。
「まさか、うそでしょ、と真っ白になった。社会人になって、数年したら結婚したいとはお互いに思っていたが、さすがにこうなるとは予想していなかった。でも二人には中絶はまったく頭になくて、産んで育てるにはどうすべきかを、すぐに考え始めたんですよ」
大学を中退する覚悟を決め、妻の両親に会いに行ったが、母親はずっと泣いており、父親にその日は帰るよう促された。数日後に双方の両親を含め話し合い、妻の両親から「産んでもいいが、大学はきちんと卒業し、それまでは(大学に近い)うちから通うのがいいんじゃないか」と提案された。
「妻の家では、必死に稼いでみんなを幸せにします、と必死に何度も繰り返して頭を下げた。帰る時は、生きた心地がしなかったし、殴られなかったのは奇跡だとさえ思った。産んでもいいと言われた時は、僕らの真剣さが伝わったのかなと少しほっとした」
妊娠が分かってから約1カ月で“マスオさん”となった西村さん。住んでいる妻の実家では、風呂掃除などを担当するほか、家電量販店でのアルバイト10数万円と奨学金5万円のうち毎月3万円を自主的に妻の両親に渡し、残りで妻と子ども3人の家計をやりくりしている。
「家族を支えるには足りないのは分かっている。出産費用は意地みたいな気持ちで自分のバイト代だけですけど。自分の家ではないから気を使うこともあるけど、金銭的サポートや住む家、自分も含めて支えてもらっている。産むことが決まってからは、なにも言わず自然と受け入れてくれて、恭一もすごいかわいがってくれている。ただただ感謝です」
08年5月に恭一ちゃんが産まれ3カ月ほどたったある日、西村さんが一人の時に恭一ちゃんが泣きやまないことがあった。熱はないし、おむつも濡れていない。抱っこしてもダメでミルクも飲まない。慌てれば慌てるほど、西村さんの不安が恭一ちゃんに伝わったように泣き声は大きくなった。
「どうしても泣きやまないから焦りまくったんですけど、ふと冷静になろうと気付いたんです。『大丈夫、大丈夫』とゆっくり何度も話し掛けたり、体をさすって、1時間ぐらいしたらやっとミルクを飲んでくれて落ち着いた。初めて自分一人で何とかできて、父親として一皮むけた気がしました」

学業に就職活動、アルバイト、夫、父親…。合コンなど “キャンパスライフ” には程遠い生活に、子どもがいなかったらどうだろうと想像することはあるという。
「でも自分の行動が、すべて恭一に直結する今が本当に充実しているし、笑顔を見られれば最高だから」
自分の経験を伝えたいと考えるようになり、今年初めに育児をする父親を支援するNPO法人「ファザーリング・ジャパン」のインターンになったのを皮切りに、4月には3人の学生とともに「10年後、笑った父親になろう」を理念とするファザーリング・ジャパン・スチューデンツ(FJS)を立ち上げた。自らもステージに上がった5月のFJS主催の父親講座には、学生や社会人200人近くが参加。現在、学生は9人に増え、9月にも現役のパパと学生の対談を企画するなど、活動は活発だ。
「同年代には仕事のキャリア形成を優先して、結婚・育児にはまだ無関心な人もいる。それは決して間違いではないけど、親になるという選択肢があること、それはとっても楽しいということを知ってほしい。学生パパの僕だからこそ発信することに意味があるじゃないかと考え、自然に自分で動きたいという欲求が出てきた」
西村さんもキャリア志向だったという就職活動は、家族を支えることに目標が変わった。一方で妻は出産・育児に備えるため、大学を辞めている。
「自分だけでなく、息子の世代に希望がある世界をプレゼントしたいから、ITや教育、食品など未来を考えられるような企業を目指してます。妻は子育てに夢中だけど、結果的に大学生活を奪ってしまったのは変わりないから申し訳ない気持ち。何かをしたいと相談してきた時は、最優先したい」
よちよち歩きだったのが1カ月ほどで千歩以上歩いたり、日課にしている絵本の読み聞かせは、おしまいと言うとまた読んでほしいかのように、満足するまで泣くようになった。
「僕の身長はもう大きくならないだろうけど、人間としての成長で負けるものかと思う。毎日成長する恭一を見ると、自然といつも頭に浮かぶんです。大きくなった恭一に『パパ、格好いい』と言われれば世界一のパパ。仕事や社会貢献など何かに打ち込んでいる姿を見せて、いっぱい語りたい」。父親になって1年あまり、あどけなさも残る21歳の顔が、たくましく見えた。(共同通信デジタル編集部、09年9月15日配信)
▽西村さんの1日
06:30 起床。ゴミ出しや洗濯など。妻は朝食づくり
07:00 家族3人で朝食
07:30 風呂洗いなどの家事
08:00 恭一ちゃんが起きていたら、絵本を読んだり積み木で遊んだり
08:30 大学へ。FJSのミーティング
12:00 昼食
13:00 講義
18:00 帰宅、恭一ちゃんと入浴
20:00 夕食
22:00 必ず絵本を読んで恭一ちゃんが就寝。大学の課題、妻とひと息つく
25:00 就寝。翌日は9時半から21時までアルバイト
西村創一朗(にしむら・そういちろう)さんの略歴
1988年、横浜市生まれ。首都大学東京の3年生。07年に高校の同級生だった妻と結婚し、08年に長男恭一(きょういち)ちゃんが誕生。09年にFJS(http://ameblo.jp/fathering-japan-students/)を立ち上げ、代表を務める。






