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「くらしEYE」のコーナーは、共同通信社生活報道部が毎週末、新聞用に出稿している「暮らしアイ」と「暮らしコンパス」「そもそも解説」を47NEWS向けに再構成したものです。

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大学発の介護予防ゲーム 運動機能改善、商品化も

介護予防の片足立ち運動ゲームをする高齢者

介護予防の片足立ち運動ゲームをする高齢者

単調になりがちな介護予防の運動やリハビリを楽しんでもらおうと、専用の体感型テレビゲームを開発する動きが大学の間で広がっている。高齢者が思わず熱中し、運動機能が改善されるなどの効果も。「シリアス(真面目な)ゲーム」と呼ばれるジャンルの一つで、商品化されるケースも出ている。
 「爆弾が来ましたよ。左手下げて!」「えいっ」。体の動きを読み取る装置を取り付けたテレビの前で、高齢者が大学生の掛け声に合わせて体を動かす。「これ面白いわ」「つい真剣になっちゃう」と笑みがこぼれた。
 1月中旬、福岡市にある九州大キャンパスの一室。高齢者向け運動教室に集まった15人が4種類のゲームに興じていた。
 宮本喜代文さん(77)は、片足立ちでバランスを保つことで画面の飛行機や鳥をまっすぐ飛ばし、ハートマークを取るゲームに挑戦。手を動かして爆弾もよけなければならず、「片足で立つことに気を取られていると、爆弾にぶつかってしまう。頭と体のいい訓練になる」と声を弾ませた。
 運動教室を主催するのは、ゲームの開発者で九州大大学院芸術工学研究院の松隈浩之准教授(44)。画面の文字を大きくシンプルにして、動きのスピードも遅めにするなど工夫を重ねた。
 シリアスゲームは教育や医療など社会的な課題解決のためのゲームを指し、脳のトレーニングや英会話用などが知られる。松隈准教授は2009年度から開発に着手。市販の家庭用ゲームをリハビリに使っていた福岡市内の病院から「身体機能が衰えた高齢者でも使いやすいものを」と要望があり、健康分野に絞って取り組むようになった。
 同病院と共同で、椅子から立ったり座ったりを繰り返す起立運動のゲームも開発。通常の訓練に比べ、最大起立回数が約20%増える効果が確認できた。販売にこぎつけ、デイサービスセンターなど全国の約50施設が購入している。
 京都大、筑波大、慶応大と医療・介護機器製造「日本シューター」(東京)が共同開発し、1月に販売を始めたのが転倒予防のための「ステッププラス」という商品だ。
 市販のダンスゲームに似ており、床に敷いたマットの上で画面の矢印を見て、足を前後左右に動かす。センサーが反応速度を計測し、転倒リスクを5段階で評価する。
 リハビリ用ゲーム開発の動きは東京工芸大や小樽商科大などにも広がる。家庭用のゲームでは科学的に効果を検証するのが難しいほか、人の動きを正確に読み取る装置が2万~3万円で手に入るようになったことも背景にある。
 ただ利用者が限られるため、大手企業は参入に二の足を踏んでいるのが実情。松隈准教授は「高齢者の増加で、訓練を楽しくやりたいという需要は潜在的には大きいはずだ。自宅でも使えるようにして、健康づくりの一つとして定着させたい」と意気込んでいる。

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