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【年金記録問題】安倍首相の約束は幻に 2千万件が持ち主不明

 公的年金制度や行政への不信感を招いた年金記録問題に関し、政府は3月で集中的な取り組みを終えました。なぜ大量の記録が誰のものか分からない「宙に浮いた」状態になったのか。そして全面解決するという政府の約束は果たされたのでしょうか。

 ―年金の記録問題ってあったね。

 加入記録に大量の誤りや漏れが見つかった問題ですね。記録は氏名や、受給額に直結する保険料の納付歴などです。漏れがあれば、本来よりも受給額が少なくなったり場合によっては受給資格を失ったりします。

 問題の中心は、持ち主が不明の「宙に浮いた年金記録」です。1997年に加入者と受給者に基礎年金番号が割り当てられましたが、誰の番号にも結び付かない記録が約5095万件あることが2007年に判明しました。

 ―行政の失態が取り沙汰されましたね。

 はい。主な原因は、今は日本年金機構となっている旧社会保険庁のずさんな管理と言えます。

 正確な年金支給には、一生涯の記録を管理する必要があります。ただ転職や結婚による改姓で、加入者が複数の記録を持つ場合がありました。旧社保庁は「記録の変遷は本人で把握しているはず」との甘い認識で、記録を統合する取り組みを怠っていました。結果的に、持ち主不明の記録が大量に生じたのです。

 また旧社保庁の職員がコンピューターに登録する際、加入者の氏名の表記や読み仮名を間違えたケースもあります。

 ―問題は他にもあるのかな。

 一つは「消えた年金」です。保険料を納めたにもかかわらず、その記録が存在しない事例です。

 さらに「消された年金」という厚生年金の記録の改ざんもあります。滞納保険料を減らしたい事業主が、従業員の給与から保険料を天引きしながら、後になって給与と加入期間を少なくする手口です。従業員からすれば、払ったはずの保険料が本来より少ないことになったり未納期間が生じたりしました。

 いずれも検証により、一部で保険料着服や事業主との結託など旧社保庁の職員が関与していたことが判明し、組織への不信感を招きました。

 ―政府の対応は。

 法整備では、記録が回復された人に原則5年の時効を超えても年金を支払う特例法などが成立し、救済が図られました。

 回復作業では、記録の持ち主を捜すため受給者と加入者に「ねんきん特別便」などを07年から発送。さらにコンピューター記録と原簿の紙台帳を突き合わせるなど、4千億円を超える経費を投入してきました。国は3月末で突き合わせ作業をほぼ完了し、記録問題への集中処理を終えたとしています。

 厚労省によると、13年12月までに記録の回復で年金額が増えたのは延べ約297万人。年間の支給額は計約1009億円で、1人当たりでは平均約3万4千円です。

 ただ、宙に浮いた記録は13年12月時点で、4割の約2097万件の持ち主が不明のまま。全く手掛かりがないものは約924万件に上ります。

 ―解決は無理なのかしら。

 問題が発覚したときに政権を率いていた安倍晋三首相は、当時「最後の一人までチェックしてすべて支払う」と繰り返し約束しました。ただ、現在の第2次安倍内閣が発足して以降は「一人でも多くの方の記録回復につなげていきたい」と発言、トーンダウンは否めません。

 厚労省の特別委員会も「本人からの申し出と記憶などを基に調査していく方法しかない」と指摘し、「解明には限界がある」と認めました。安倍首相が約束した解決は結局、幻でした。

 政府に求められる姿勢は、失態は取り返せないと真摯(しんし)に認め、二度と同様の問題を起こさないよう徹底することです。(水内友靖)

 一口メモ 未解明のまま残る年金記録2千万件の持ち主を特定するには、本人からの申し
出が不可欠です。厚生労働省が“最後のとりで”と位置付けているのは、本人が年金を受け取り始めるときです。

 加入者には毎年「ねんきん定期便」を送り、加入歴を通知。ただ年金受給が始まる際に「額が少ない」と不審に思って、記録を回復させて受給額が増える例は少なくありません。

 また受給には25年間の納付や免除などが必要ですが、2015年10月から10年間に短縮される予定。現行で「どうせ加入期間が足りず年金をもらえない」と諦めている人が、申し出ると期待されます。

 持ち主不明の記録には、やむを得ない事情のため加入者が別の名前や生年月日にしている例もあります。厚労省は「本来の記録、受給額に戻すため、正直に申し出てほしい」と呼び掛けています。

 (共同通信)

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