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「くらしEYE」のコーナーは、共同通信社生活報道部が毎週末、新聞用に出稿している「暮らしアイ」と「暮らしコンパス」「そもそも解説」を47NEWS向けに再構成したものです。

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【防災トランプ】災害対策「自分目線」で トランプ、地図で意識向上

被災時の状況の想定に役立つ「防災トランプ」

被災時の状況の想定に役立つ「防災トランプ」

 地震や津波、台風などの災害に備えるため、被災時の状況をきめ細かく想定し、被害を最小限に抑えることを目指す防災教育が注目されている。使うのはトランプやハザードマップ(被害予測地図)。画一的な防災対策とは異なり、「自分目線」で日常に潜む危険や対策を考え、防災意識を高めるのが狙いだ。

 11月初旬、東京都千代田区の区民会館にある会議室。休日の夜、集まったサラリーマンや大学生ら10人以上がトランプに興じていた。ただ、使っているのは普通のトランプではない。全ての札に災害の危険事例が記された「防災トランプ」だ。

 このトランプは「ばば抜き」や「ポーカー」などで活用できる。例えば「ばば抜き」では通常と多少ルールが異なり、同じ数字がそろっただけでは札を捨てることができない。札に書かれた災害や危険に対し、自分が取るべき行動などを話し、他の参加者を納得させることも条件となる。

 記者も初めて参加。「高台がない平野部の沿岸域にいるときに津波警報が発令された」と書かれた札を捨てようとして、説明を始めた。

 「高い建物を探し、上の階に逃げます」。「通勤途中だったらどうしますか」と、他の参加者が質問した。「普段使っている地下鉄の駅は深い場所にあるので、階段を駆け上がらなければなりません」。「今履いているハイヒールでは難しそうですね」と参加者。記は歩きやい靴を履くことの大切さを確認し、札を捨てることができた。

 トランプを考案したのは、東大大学院で都市工学を専攻するNPO法人理事の福本塁(ふくもと・るい)さん(31)。揺れを感じたら机の下に潜り、防災頭巾をかぶって校庭に走る。東日本大震災後、そうした「画一的」な防災訓練だけでは被害を十分に抑えることができず、さまざまな状況を踏まえた防災対策が必要と考えたのが開発のきっかけだ。

 福本さんは何度もトランプ講習会を開催。消防士や企業の防災担当者、社会福祉を学ぶ大学生らが参加した。福本さんが住む神奈川県愛川町の一部地区では、全世帯に配ることも決まった。

 「防災トランプは、被災した時間や場所によって、想定しなければならない状況が全く異なることに気付かせ、対策を練るきっかけをつくる。教育や福祉関係者、市民団体など防災を担当する人たちに広めたい」と意欲を見せる。

 震災の被災地でも取り組みが進む。岩手県大船渡市の越喜来(おきらい)小学校。震災前に避難用スロープを設置して児童73人と教職員全員が助かった経験がある。同小では昨年11月、子どもたちが参加し、新たな津波避難マップの作成に着手した。

 地震や津波は学校にいる時に発生するとは限らない。学校や自宅以外の場所に1人でいる時に発生したらどのように行動するべきかを子どもに考えてもらうのが狙いだ。

 最大の特徴は、津波による浸水地域などが分かるハザードマップに、子どもが自宅近くの避難場所や崖崩れなどの危険箇所を書き入れ、「自分仕様」にアレンジしたことだ。想定される避難経路を保護者が子どもと実際に歩き、体力を考慮して避難が可能かどうかを確認。さらに行政担当者といった防災のプロの意見も取り入れ、独り善がりな内容に陥らないようにした。

 作成に協力した防災科学技術研究所(茨城県つくば市)の臼田裕一郎(うすだ・ゆういちろう)主任研究員は「行政がインターネットなどで公開しているハザードマップの情報は、ほとんど使われず眠っている。ハザードマップを子どもたち個人の情報を加えて作り替えた例は珍しい」と話した。

 (共同通信)

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