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【横浜の待機児童対策】保育コンシェル奏功、大幅減 家庭に合わせ施設探し

 子どもの預け先について相談を受ける保育コンシェルジュ=横浜市の地域子育て支援拠点

 子どもの預け先について相談を受ける保育コンシェルジュ=横浜市の地域子育て支援拠点

 認可保育所の待機児童が全国一多かった横浜市が今年4月、その数を大幅に減らした。定員の拡充のほか、専門の相談員「保育コンシェルジュ」の配置など、さまざまな対策が奏功した形だ。待機児童解消ための秘訣を探った。

保育所や幼稚園に入園前の子どもと保護者が、室内で遊びながら交流を深める横浜市泉区の地域子育て支援拠点「すきっぷ」。月に1度の相談日、同市の「保育コンシェルジュ」打越稔枝さん(50)は、子どもが遊ぶすぐそばで母親に寄り添って話を聞く。

 来年4月に育児休業から職場に復帰予定という母親(27)は「息子は義母が預かると言っていて夫も賛成。でも、保育所を検討しなくていいのか迷っている」と打ち明けた。

 打越さんは、通勤経路などから通園可能な施設を示しながら「保育所に預け、義理のお母さんには急な発熱の時に助けてもらったら」などと助言。相談を終えた母親は「知識が豊富で、身内と話すのとは違った」とほっとした表情を見せた。

 横浜市は2010年4月、認可保育所の待機児童が全国の市区町村で最も多い1552人を記録。解消策の一環として、11年度から市内全18区に専門相談員「保育コンシェルジュ」を配置した。

 保育コンシェルジュは、従来市が把握していなかった認可外保育所や幼稚園の預かり保育など、子どもを預けられるあらゆる施設の情報を把握する。「潜在化している保育ニーズを聞き取り、事情に合わせて認可保育所以外の選択肢も提案している」と打越さん。

 例えば、週2~3日のパートなら幼稚園の預かり保育で足りるのに、認可保育所しか知らない親は無理をして週4日以上働き、預けようとする。情報提供だけで待機児童になるのを防ぐことができるため、保育制度の説明会も毎月開いている。

 今年4月、待機児童は179人にまで減少。市の伊東裕子・緊急保育対策課長は「定員を増やすというハード面の対策に加え、ソフト面ではコンシェルジュの存在が大きく寄与した」と強調する。

 打越さんらは、民間出身の林文子市長の提案で4月入園を逃した待機児童家庭のフォローも行う。伊東課長は「役所にはない発想だったが、状況を詳しく聞くことで問題解決の糸口が見えてきた」と話している。

 共働き家庭の増加で、認可保育所への入所を待つ待機児童は0~2歳児を中心に全国で2万5千人を超える一方、少子化で3歳以上を預かる幼稚園では定員割れの施設が増えるなど、幼い子どもを持つ親の希望と施設の実態が合っていない。

 社会保障と税の一体改革では、保育所と幼稚園の機能を併せ持った施設を増やす方向だが、横浜市の待機児童対策は、運用面でこうしたミスマッチの解消を図った。

 認可保育所や市独自の基準を満たす認可外施設「横浜保育室」の新設のほか、3歳以上で定員割れの既存保育所では部屋割りの見直しなどで0~2歳児の枠を拡充した。

 また、幼稚園による午後6時半までの預かり保育は2008年には実施が65園だったが、市の職員が園を訪ねる“営業活動”を展開。12年4月に実施園は110園となり利用者は約千人増えた。

 一方、課題もある。保育所事業費は12年度予算で677億円と、5年間で4割近く増大。月額保育料を1819円増の平均2万7044円と7年ぶりに引き上げた。

 保育士不足も深刻だ。仕事に就いていない潜在保育士の掘り起こしに取り組むが、新規確保は難しいのが実情。これは待機児童を抱える自治体共通の課題で、国に抜本的対策を望む声は多い。

 松田茂樹・第一生命経済研究所主席研究員の話 人口減少が進む中、待機児童対策は時間との闘いだ。保育所不足などを理由に、出産期の女性が安心して子どもを産めなければ少子化はさらに深刻化する。政府は認定こども園や認可保育所を拡充する方針だが、自治体はできる対策から行うことが求められている。
 横浜市の取り組みのポイントは、保育コンシェルジュによる親への効果的な情報提供によって既存施設を有効活用した点にある。幼稚園の預かり保育などで待機児童を解消できる余地は大きい。他の自治体でも直ちに採用できる取り組みで、こうした対策の速やかな広がりを期待したい。

 (共同通信)

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