土煙を上げ、象の群れが、土産物店街をのし歩く。スリランカの中心都市コロンボに近いピンナワラには、人間に親を殺されたり、群れからはぐれたりした象が暮らす「象の孤児院」がある。東京ドーム約2個分の敷地には約90頭の象がいる。

 保護が目的だが、施設は観光地にもなっている。毎日近くの川へ水浴びに向かい、大行進する象たちの姿は壮観だ。

 孤児院は、アジアゾウの絶滅が危ぶまれた1975年、国が管理する施設として開設された。以来、独自の繁殖プログラムで、71頭の象が誕生し、世界中の動物園などへ寄贈されてきた。

 現在、国内には推定7千頭の野生の象が生息し、回復傾向にある。

 しかし、国立動物園局のナウォッド・アビシンハ副主幹は「状況は危機的だ」と訴える。近年、急激な開発で生息域が狭まった。農作物やゴミをあさり、農民に殺される象も多い。政府は保護区近くでのゴミ投棄を禁止、象虐待の刑罰を強めるなど規制を広げている。

 保護政策の象徴とも言える孤児院で象の世話はきめ細かい。1頭ごとに担当の象使いが寝食を共にして信頼関係を築く。病気になれば、高価なハーブやオイルを使用した伝統医療を象にも施す。

 国とは別に、民間でも保護への機運は高まる。長年観光客を乗せてきた40歳以上の老いた象をケアする試みも始まった。ツアー客は、象の生活リズムに合わせて散歩、水浴び、休憩に同行する。1日7人までに制限し、派手な演出はないが欧米客を中心に、半年先まで予約が入る人気ぶりだ。

 人々が「国の宝」と呼ぶ象を守るため、官民一体で模索を続けている。(写真と文、鈴木大介・共同通信写真映像記者)

 *写真・記事の内容は2017年7月26日までの取材を基にしたものです