日米パネル討論

新政権と明日の日米関係

「同盟の深化」をどう実現するのか

Japan-U.S. : New Governments and New Relation

 1960年の日米安全保障条約改定署名から50年を前に、米軍普天間飛行場移設問題に揺れる日米同盟。中国の台頭や北朝鮮の脅威など新たな課題を抱えるアジアと世界の中で、日米両国は今後の関係をどう築くべきか。共同通信社と同社加盟社論説研究会、米ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院(SAIS)ライシャワー東アジア研究所が2010年1月12日、都内で開催したパネル討論会「新政権と明日の日米関係」で、パネリストらは同盟の歴史的経緯を踏まえ、新たな関係を模索する必要性を指摘。米政権が掲げる「核なき世界」への期待も共有した。

武正公一氏の基調講演

武正公一氏

武正公一氏

(たけまさ・こういち)

慶応大卒。松下政経塾、埼玉県議を経て00年衆院議員、当選4回(民主、埼玉1区)。09年9月から外務副大臣。

 日米関係の第一の課題は同盟の深化であり、日本外交の基軸が日米同盟であることは政権交代によっても変わらない。両国が2国間や地域、地球規模の課題に協力して対応することによって関係はより深まる。その延長線上に日米同盟のさらなる深化があると考える。

 日米安保体制はアジア太平洋地域の平和と安定の礎だ。米軍普天間飛行場移転問題や日米地位協定の改定を含め幅広く協議することが、同盟を継続発展させることにつながる。

 また、今年は日本がアジア太平洋経済協力会議(APEC)の議長国であり、来年の議長は米国。日米が連携してアジア太平洋地域のさらなる発展に向け指導力を発揮する。

 気候変動問題や核軍縮・不拡散、北朝鮮やイランの核問題など重要課題についても米国と取り組んでいく。


パネリスト冒頭発言要旨

日米パネル討論会の様子
 日米パネル討論会に参加した、(左から)長島昭久防衛政務官、自民党の河野太郎国際局長、エコノミストの吉崎達彦氏、米シンクタンクAEIのマイケル・オースリン日本研究部長、ライシャワー東アジア研究所のケント・カルダー所長=12日、東京都千代田区
長島昭久氏

長島昭久氏

(ながしま・あきひさ)

米ジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院(SAIS)修了。外交問題評議会上席研究員などを経て03年衆院議員、当選3回(民主、東京21区)。09年9月から防衛政務官。

 日米同盟はアジア太平洋地域安定の基盤を提供している。今後30年、50年持続可能な同盟のために日米が率直に議論することが重要で、同盟の深化につながる。

 深化は同盟を安定させるために必要だが、「有事のリスクは米国、平時のコストは日本」という非対称的な役割分担がある。日米どちらかに過度の負担がかかる構造を変え、(負担の)一つ一つを取り除くことが安定のために重要。

 米軍普天間飛行場移設問題はのどに刺さったトゲ。鳩山政権は、今年5月までに決着させると表明したが、普天間だけでなく、(リスクとコスト再検討の幅広い)議論のプロセスで、日米同盟に対する国民的な支持を固め直したい。

 緊急展開部隊としてアジア太平洋全域に抑止力を持つのが海兵隊の駐留目的。(アジア主要都市に近い)沖縄の地理的な特性は否定できず、普天間を閉めれば運用上(移転などの)選択肢は多くない。

 中国は冷戦期のソ連とは違う。封じ込める部分もあるが、マーケット(市場)として付き合っていかねばならない。ジレンマだ。


河野太郎氏

河野太郎氏

(こうの・たろう)

米ジョージタウン大卒。富士ゼロックスなどで勤務後、96年衆院議員、当選5回(自民、神奈川15区)。自民党国際局長。

 日米同盟はこの50年間、専門家の間の同盟で終わってしまった。自衛隊と米軍、外務省と国務省で話をする限り、あまり揺らがなかったが、それぞれの国民に根差した同盟なのか。

 恐らく(米国の)核の傘はぼろ傘。機能させるためには大陸間弾道ミサイル(ICBM)だけでは駄目だ。北朝鮮の核を抑止するに当たり、非核三原則を前提としてイデオロギーで安保を語るのではなく、現実的にどうするかを語らなければ国は守れない。

 「持たず、つくらず」は変えないが、持ち込ませずという原則を変えるのかどうか。ICBMと通常兵器の間に、使うことが望ましい核兵器があるのか。米政府だけでなく日本も核の引き金に指をかけさせろと言うのがいいのか議論が必要。

 (普天間の移設先については)わたしが鳩山政権にいれば嘉手納基地がいいと言う。(鳩山政権が)辺野古から嘉手納に切り替えるなら、われわれはサポートしなければいけない。


吉崎達彦氏

吉崎達彦氏

(よしざき・たつひこ)

一橋大卒。84年日商岩井(現双日)入社。91年に米ブルッキングズ研究所客員研究員。04年から双日総合研究所副所長・主任エコノミスト。

 G8(主要国)がG20(20カ国・地域)に移行しつつあり、G20ではメンバーが多すぎるので事実上、米中で物事を決めていくようになるだろう。その中で「日米よりも日中関係重視」というのはばかげた考え方だ。

 鳩山政権は、経済大国だから国際的役割を果たし「普通の国」になるべきだという小泉政権が目指した外交から、慎重で現実的な外交に進もうとしているように見える。日米同盟も湾岸危機以前のような、消極的なものでいいという方向に進んでいるのではないか。

 普天間問題では以前、海上基地をつくるメガフロート案があった。しかし、東京の大企業がもうけるだけで、地元が潤わないから駄目だとしてこの話はなくなった。やはり(米軍が)沖縄にいてほしいという議論が当時あったはず。今起きている議論は多分に一面的なものではないか。

 東アジア共同体について、中国には「インドを入れたくない」との考えはあるが、意外とアイデアがない。日本としては経済だけでなく歴史的文脈から考えることが重要だ。


マイケル・オースリン氏

マイケル・オースリン氏

米イリノイ大で00年博士号(歴史学)。エール大助教授などを経てアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)日本研究部長。

 日米同盟は半世紀にわたって続く歴史的にもまれな同盟だ。だが、最近は(安保条約改定50年を)祝うどころか心配することになってしまった。(普天間問題で)米国の当局者がいら立つのは、日本を重視していることの表れだが、解決が長引けば、アジアやほかの国々の諸問題へ関心が移ってしまうだろう。

 オバマ米大統領の広島・長崎訪問(への期待の裏)には「核なき世界」への熱望がある。実現には両国の事前の協議が必要だ。一方で核兵器を持とうとする危険な国が存在し、現実と理想には大きな溝がある。北朝鮮は交渉する用意を示しているが、核問題の解決は絶望的だ。北朝鮮とは対話をしながらも、われわれは立場を弱めてはならない。

 米国が今や中国と将来をともにしつつあるとの懸念は誤っている。中国は、ソ連の軍事力と最盛期の日本の経済力を併せ持つ国だが、所得格差や民族問題、さまざまな団体への抑圧などの問題を抱え、「生活の質」は日米に及ぶべくもない。中国が21世紀の覇権国家となるとの考えは見当違いだ。中国の弱さを踏まえて現実的な政策をとる必要がある。


ケント・カルダー氏

ケント・カルダー氏

米ハーバード大で博士号。戦略国際研究センター(CSIS)日本部長などを経て03年からジョンズ・ホプキンス大高等国際問題研究大学院(SAIS)ライシャワー東アジア研究所長。

 日米は大洋を挟んで互いに向き合っているが、その海の幅は世界で一番広いとライシャワー元駐日米大使が繰り返し述べたことを覚えている。文化的な相違も含め、日米の間には距離があるということだ。

 しかし、同盟は50年前と比べて強化された。1994年の朝鮮半島危機の後、クリントン元政権下で日米防衛協力のための指針(ガイドライン)見直しが行われ、中枢同時テロ後にさらに強化された。

 ただ普天間問題などを見ると、日米はこれから危険な時期を迎えるかもしれない。(辺野古を移設先とする現行の)合意は専門家らによる最善の努力の表れ。多くの米国人はボールは日本側にあると強く感じており、問題は日本がどう対応するかという点にある。一部の基地機能は(沖縄県外に)移転可能だが、移転できないものもある。

 核兵器を廃絶するのは極めて困難だが、オバマ米大統領の主張は道徳的に重要。(核開発をしないよう)北朝鮮やイランを説得する上でも重要だ。


討論司会者のまとめ

「日米安保に新たな息吹を 平和と安定の公共財に」

 改定日米安保条約は19日で署名から50年を迎える。半世紀を耐え抜いた同盟関係は日米両国のきずなの強さを物語っている。裏返せば、冷戦終結後も東アジアには不安定要因が厳然として残っていることを示すものだ。

 そうした状況認識の下で行われた今回のパネル討論では、日米両国が安保条約の意義を再定義し、アジアだけでなく「世界の平和と安定の公共財」として生かすことが必要との考えで一致した。そのためには専門家に議論を任せず、国民に根差した同盟に脱皮させたいとの指摘はもっともだ。

「新政権と明日の日米関係」をテーマに開かれたパネル討論会=12日、東京都千代田区

 米側パネリストからは沖縄の普天間飛行場移設問題をめぐる混乱に懸念と戸惑いが示された。日米安保は両国の権利と義務が非対称な世界でもまれな条約だ。脅威が存在し、「有事のリスクは米側が負い、平時のコストは日本が担う」(長島昭久防衛政務官)のであれば、日本は基地提供の義務をきちんと果たすべきだ。

 ただし沖縄にだけその重圧を押し付けてはならない。政権交代で在日米軍再編のプロセスも再検証されて当然だ。とはいえ普天間飛行場の県外移設には相当な困難が伴う。沖縄県民の期待に応えられるかどうか、鳩山内閣の力量が問われる。

 ハワイで12日に行われた日米外相会談では「同盟深化」に向けた協議を開始することで合意した。条約名にもある「相互協力」の実を挙げ、環境や大規模災害、貧困など地球規模の課題にも取り組むことで日米安保に新たな息吹を与えたい。(共同通信論説委員・西川孝純)

最近の日米関係

2009年 9月 23日 鳩山由紀夫首相とオバマ米大統領がニューヨークで初会談。日米同盟深化で一致
10月 20日 ゲーツ米国防長官が岡田克也外相と会談、米軍普天間飛行場移設を日米合意に基づき早期に決着するよう要請
23日 鳩山首相が普天間問題について時間をかけて判断する考えを表明
11月 13日 オバマ大統領が来日し、鳩山首相と会談。地球温暖化対策などで協力する共同文書発表
14日 オバマ大統領が演説で、日本がアジア安定の「要」と強調
12月 21日 クリントン米国務長官が藤崎一郎駐米大使を呼び、日米合意に基づく普天間問題解決を要請
25日 鳩山首相が10年5月までに普天間飛行場の新たな移設先を決定したいと表明
2010年 1月 12日 日米外相がハワイで会談し「同盟深化」に向けた協議開始で一致
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