(14)「行」 十字路の形そのまま文字に
「行(ぎょうがまえ)」や「彳(ぎょうにんべん)」、さらに「
(しんにゅう)」は漢字を構成する大切なパーツです。今回は、これらの字形をまとめて説明しましょう。
まず「行」です。これは古代文字をみると、「なんだ、そうなのか」と思います。「行」は「十字路」の形をそのまま文字にしたものなのです。
大きな道が交差している場所で、そこを人が行くので「いく、ゆく」の意味となり、行く行為(こうい)から、いろいろな行為の意味ともなりました。
「彳」は、その左半分の形。現在の字形も「行」の左半分の字形ですが、古代文字も、十字路の左半分をかいたものです。小道のことで、これも「いく、ゆく」を意味する字形です。
次に「
」です。これはもともと「
(ちゃく)」という字形でした。「
」は「彡」と「止」を合わせた字形をしています。この「彡」の部分は古代文字を見ると分かりますが、「彳」の字形なのです。
つまり「
」は「彳」に、足を示す字形「止」を加えて「道を行く」意味です。この「
」が変化したものが「
」なのです。だから「
」と「
」は同じ意味の字形と考えていいのです。
「北」という字の意味について紹介(しょうかい)した際に、「従」の字についても説明しました。「従」の旧字「從」は「从」「彳」「止」を合わせた文字になっています。
「從」のポイントは「从」の部分で、「人」が2人進む姿から「したがう」の意味が生まれたことを述べました。今回は「从」以外の「從」の部分を見てください。
それは「彳」と「止」です。これは「
」の字形の要素とまったく同じですね。だから「道を行く」意味の字形です。「從」の「从」以外の部分は「彳」と「止」が、「
」や「
」に変化していく前の古い字形の姿を現代に伝えています。
つまり「行」「彳」「
」は、道を歩み行く意味。そのことを覚えておいてください。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

小山鉄郎(こやま・てつろう)1949年群馬県生まれ。共同通信社編集委員兼論説委員。白川静さんが理事長を務めていた国の認定NPO法人・文字文化研究所理事を2009年7月まで務めた。著書に白川静文字学をやさしく紹介した「白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい」「白川静さんに学ぶ漢字は怖い
」(いずれも共同通信社刊)などがある。
