(4)「神」 最も恐れられた自然現象
中国の古代社会では神様へのお祭りがとても大事なことでした。ですから前回は「祭」という字について説明しました。今回は「神」という字について紹介(しょうかい)しましょう。
「神」を説明するには、まず「申」という字について話さなくてなりません。なぜなら「申」がもともとの「かみ」の意味の字だったのです。
古代文字やイラストを見るとわかりますが、「申」は稲妻(いなずま)のことです。稲妻が屈折(くっせつ)しながら走る姿を書いたものです。
雷(かみなり)や稲妻は古代中国では最も恐(おそ)れられた自然現象でした。神様が現れる現象と考えられていたのです。
ですから「申」が神様を表す漢字なのですが、その「申」が次第に「もうす」などの意味に使われ出したので、「申」の偏(へん)に「示」が加えられて「神(
)」という字が作られたのです。
「示」は前回の「祭」の字のところでも紹介しましたが、神様への供物を載(の)せるテーブルです。この神を祭る際のテーブルの形「示」が、神様をあらわす記号となりました。「示」偏は現在「
」と書きますが、この「
(示)」偏がついた漢字は、みな神様と関係のある文字なのです。
「申」は稲妻の形、電光の形。その稲妻は縮んだり、伸(の)びたりしながら空を走ります。それゆえに、屈伸(くっしん)する意味や、伸びる意味があります。
その「申」に人偏を加えた「伸」は人間が屈伸する意味の字。後にすべての伸びるものに使われるようになりました。
「電」も「申」の関係字です。古代文字を見てもらうとわかりますが、「電」は「雨」と「申」が合わさった文字です。
「電」の「申」は電光のしっぽの部分が右に屈折した形ですね。「雨」は「あめ」ばかりでなく、気象現象をあらわす字形です。「雨」と「申」を合わせて、稲妻の意味になりました。また稲妻のように速いことを意味します。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

小山鉄郎(こやま・てつろう)1949年群馬県生まれ。共同通信社編集委員兼論説委員。白川静さんが理事長を務めていた国の認定NPO法人・文字文化研究所理事を2009年7月まで務めた。著書に白川静文字学をやさしく紹介した「白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい」「白川静さんに学ぶ漢字は怖い
」(いずれも共同通信社刊)などがある。
