(90)「派」 水が分かれて流れる姿
派遣(はけん)社員、派閥(はばつ)解消、アフガン派兵など、近年しばしば使われる漢字である「派」について、今回は紹介(しょうかい)しましょう。

この「派」には「
(サンズイ)」がついているので、どうやら「水」に関係する文字であることは何となく分かるかと思います。そこで「派」を説明する前に、まず「水」について紹介したいと思います。
「水」の古代文字を見てください。真ん中の1本の縦の流れの左右に小さな点が三つずつ付いています。これは小さな水の流れを表しています。真ん中に大きな流れがあって、左右に小さな流れがあるのが「水」です。
そこで「川」の古代文字を見てください。これは3本ともちゃんとした筋になっています。この「川」は勢いよく流れる大きな川を表しています。両方の古代文字を比べてもらうと、水の流れの勢いの違(ちが)いが分かってもらえると思います。
そこで「派」の古代文字を見てほしいのです。この「
(サンズイ)」を除いた右側の字形は、水が分流する姿を表していて、この字形が「派」の、もともとの字です。
それに「
(サンズイ)」を加えた「派」は「水が分かれ流れること」の意味から「わかれる」意味となり、さらに「つかわす」などの意味になったのです。
この「派」に関連した文字を一つだけ挙げておきますと、「脈」という字がそうです。
右の字形は分流する水の形。それに体を示す「月」(肉づき)を加えて、「血管、血のすじ」のことです。物事のすじ道のことを「脈絡(みゃくらく)」と言いますが、「脈絡」も元は「血管」のことです。
中国の古代医学では、つぼとつぼを結ぶ経絡(けいらく)の研究が中心でした。人間を縦方向に走る12の経脈がメーンストリートであり、その経脈から分かれて横方向に走る15の絡脈があるそうです。
そんなことから、人と人の気持ちがつながる「気脈」や、山がつながる「山脈」などの言葉も生まれました。(共同通信編集委員 小山鉄郎)

小山鉄郎(こやま・てつろう)1949年群馬県生まれ。共同通信社編集委員兼論説委員。白川静さんが理事長を務めていた国の認定NPO法人・文字文化研究所理事を2009年7月まで務めた。著書に白川静文字学をやさしく紹介した「白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい」「白川静さんに学ぶ漢字は怖い
」(いずれも共同通信社刊)などがある。
