(10)気付いたらいなかった 「両生類の箱舟」計画
温泉みたいに気持ちいいのかな。水そうの中、水に体半分つかってじっとしている。トノサマガエルだと思ったら、トウキョウダルマガエルという別の種類だそうだ。
東京・上野動物園の飼育員、斎藤祐輔(さいとう・ゆうすけ)さんが説明してくれた。「よく似ていて、とても見分けにくいんです。トウキョウダルマガエルは仙台(せんだい)平野から関東平野、長野県、新潟(にいがた)県にいます」

体半分、水につかったトウキョウダルマガエル=東京・上野動物園
今、上野動物園はこのカエルを増やそうとがんばっている。どこにでもいそうなのになぜ?
「いるのが当たり前だと思っていたのに、調べてみたらいなかった。東京23区にはほとんどいなかったんです」
水辺が失われていることが大きな理由だろうと、斎藤さんは言う。カエルは水と陸の両方にすむ「両生類」の仲間。でもどっちでもすめるわけじゃない。両方がちゃんとしてないと生きられないんだ。
両生類は世界でもどんどん減り、3分の1の種が絶滅(ぜつめつ)しそうだといわれている。原因はいろいろ。地球温暖化とかオゾンホールという言葉は聞いたことがあると思う。最近ではツボカビという菌が広がり、カエルが全滅しそうな国もある。
トウキョウダルマガエルを増やすのは、動物園が取り組んでいる「両生類の箱舟(はこぶね)」計画の1部だ。計画の名前は、聖書の「ノアの箱舟」が、大洪水(だいこうずい)のときにたくさんの動物を乗せて生き延びさせたことからきている。
カエルがいなくなると?「今までカエルに食べられていた虫が増えます。逆にカエルを食べていた鳥やヘビが減る。自然のバランスがくずれたら大変です」。(文・佐々木央、写真・萩原達也)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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