(36)えさ取り合うけど仲良し 人と長く深い関係
えさの肉を取り合って二頭がはげしく争う。ガウ、ガウ、ガガガウ。すごいうなり声。するどい牙(きば)でかんだら大けがをさせたり、死んじゃったりするんじゃないかな。

「体感ルーム」から見たシンリンオオカミ。犬とそっくりだが、牙はするどい=富山市ファミリーパーク
心配になって富山市ファミリーパークの岸原剛(きしはらたけし)さんに聞いた。「本気で戦っているわけじゃないんです。ガブッとかんではいないでしょう。ほら、すぐに片方がふせて、ごめんなさいしています」
いつもは八歳(さい)のメス、ナナの方が強くて、あやまるのは五歳のオス、サスケ。でもきょうはナナが近づくとサスケがおこりまくる。馬肉はサスケがひとりじめだ。ナナがかわいそう。
「だいじょうぶですよ。昼間どちらかがひとりじめしたら、夕ご飯は別々だから、食べられなかった方を中心にやります」
ファミリーパークは、オオカミの運動場の真ん中までトンネルで行ける。そこにガラス張りの建物「体感(たいかん)ルーム」があって、あみのすき間からえさをやることもできる。
えさの取り合いもするけれど、ほんとは仲がいい。三年前には子どもが七頭も生まれ、各地の動物園にもらわれていった。
二頭のふるさとはカナダ。女性のお客さんが「日本ではどこにいるんですか」と質問した。「日本にはもういません」と岸原さん、残念そうだ。
ニホンオオカミは百年ぐらい前に見つかったのが最後。オオカミには悪役のイメージもあるけれど、日本では昔、神としてあつかった。どっちにしても人と長く深い関係にあった。「この二頭を見て、日本ではなぜいなくなったのか、数の少なくなっている動物をどうしていくかを考えるきっかけになればと思います」(文・写真、佐々木央)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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