(7)世界最高齢、仲間は危機 森の木切られ農園に
左目は見えない。右目もまぶたが垂れ下がってふさがっている。だから、時々まぶたを指で持ち上げてまわりを見る。小さな黒い目が愛らしい。
東京・多摩(たま)動物公園のモリーは推定56歳(さい)、世界最高齢(れい)のオランウータンだ。人間でいえば100歳ぐらいのおばあさんだけどとても元気。絵をかくのが得意だ。

まぶたを持ち上げてまわりを見るモリー(多摩動物公園提供)
東南アジアの大きな島、ボルネオで生まれ、3歳で日本に来た。現地には仲間がいて、おいやめいもいるはずだ。でも、ボルネオのオランウータンは絶滅(ぜつめつ)の危機だという。担当の黒鳥英俊(くろとり・ひでとし)さんの説明を聞こう。
「オランウータンの住む熱帯雨林が切られたり焼かれたりして、アブラヤシの大きな農園になっているんです」
ヤシ油は安くて体にもいい。みんなが食べるカップめん、ポテトチップ、チョコや化粧(けしょう)品の原料として広く使われている。表示に「植物油」とか「植物油脂(ゆし)」とあれば、ほとんどがヤシ油だ。
熱帯雨林にはゾウやサイなど多くの動物がいる。生き物たちは、わずかに残った森に追いこまれた。農園に入りこんで、わなにかかったり、殺されたりするものもいる。
残った森も農園に囲まれ、分断されている。「群れ同士の交流がないと、種としての生命力が弱くなってしまう」。黒鳥さんは心配そうだ。
オランウータンは樹上生活だから小さい川もわたれない。最近、川の向こう岸にわたれるように、消防ホースでつり橋をつくった。黒鳥さんも現地に行き、協力した。
土地を買い上げて、もとの森にもどす運動も始まっている。モリーの仲間たちを救えるだろうか。(文・佐々木央)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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