(16)120匹以上が走り回る 野生に近く、戦いも
足元をさっと走りすぎた。また1匹(いっぴき)。目を上げると、木の上でくるみをかじっているやつがいる。枝にどてっと腹ばいになっているのは、もうおなかいっぱいなのかな。

えさの木の実をかかえるリス=東京・井の頭自然文化園
東京・井の頭自然文化園の「リスの小径(こみち)」は自然の林のよう。120匹以上のニホンリスが自由に走り回る。木にかけ上がる。真っ逆さまにおりる。見ていてあきない。
ニホンリスは日本だけにいる。でも西日本ではずいぶん減って、九州ではほとんど見られなくなった。井の頭にはリスの子どもを増やす「繁殖棟(はんしょくとう)」もある。
水谷京子(みずたにきょうこ)さんはリスを担当して2年目。体調が悪くならないよう気を配る。「暑い時期だと、ちょっと調子がおかしいなと思ってつかまえると、ショックを起こしてしまうこともあるんです」
繁殖棟には25部屋もある。「毎日、1部屋1部屋えさ入れや水入れをきれいにして、新しいえさをやるようにしています」。清潔第一だ。
広くて自由な「リスの小径」の方が、小部屋の「繁殖棟」より楽しそうだけれど、現実はきびしいらしい。「野生に近いのでオス同士の戦いで傷ついて死んでしまうのもいます。強いリスがえさをいっぱい食べて、弱いのが食べられないこともあると思うので、えさ台を分散させたり、多めに置いてやったり」
リスはえさをためこむ「貯食行動」をする。「地面にえさをうめて、これでもかというぐらいぱんぱんに固めた後、見ていたリスが『このへんだろ』っていうふうに持って行っちゃうこともあります。なんか人間くさいんです。そんなところも見てください」(文・写真、佐々木央)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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