(18)腕でえさをつかまえる 水質にも敏感
半透明な体がゆらゆら泳いでいる。担当の山内信弥(やまうちしんや)さんが水槽(すいそう)の上からイワシを入れた。イワシが泳ぎ始める。イカはまだゆらゆら。あれ? いつの間にかイワシがイカの足にからまって動けなくなっている。

イワシをつかまえるケンサキイカ=福島県いわき市の「アクアマリンふくしま」
「足でつかまえるんですね」と山内さんに聞くと「われわれは腕(うで)と呼んでます」。イワシはだんだんとイカに飲みこまれ、最後に頭だけが水槽の底にしずんでいった。
水族館や動物園はめずらしい生きものを見せるところだと思っていた。でも福島県いわき市の「アクアマリンふくしま」には、イカやイワシにサンマまでいる。焼き魚やすしで食べるふつうの魚が海の中でどうしているのか、確かに知らなかった。たとえばイカは前にも後ろにも泳ぐ。どちらを前というかわからないけど。
「イカの泳ぐ姿を見せたい」と東京から孫を連れて来たおじいちゃんもいた。ところが自分が面白くなっちゃってずっと水槽の前をはなれなかった。これはタクシーの運転手さんに聞いた話だ。
飼育はむずかしい。さわると皮がはげる。びっくりさせると水槽にぶつかって死んでしまう。
「水質にも敏感(びんかん)なので、水もいつもきれいにしておかないと。あと、えさですね。動いているえさが好きなので、生きているイワシならいいけど、そうでないえさは水槽の底に落ちてしまうともう食べません」
えさが終わったら掃除(そうじ)だ。ホースで水を吸って、あみでろ過する。えさと掃除が毎日2回、計約4時間もかかる。「イカに人生ささげているみたいなもんです」。山内さんが楽しそうに笑った。(文、写真・佐々木央)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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