(4)つばさ広げゆうゆうと 環境つくり直し野生復帰
気流をつかんだのか、大きく羽を広げたまま、ゆうゆうと空をすべる。白い体に、つばさの黒が美しい。つばさを広げると約2メートル。大人の身長をこえる。
「こんな大きな鳥が身近にいるって楽しいことだと思いませんか」。兵庫県豊岡市(ひょうごけんとよおかし)の「コウノトリの郷(さと)公園」研究部長、池田啓(いけだ・ひろし)さんはそう話す。

つばさを広げるコウノトリ=兵庫県豊岡市の「コウノトリの郷公園」
もともとはシベリアから中国東北部にかけての湿地帯で生まれ育ち、日本にはわたり鳥としてやってきた。居心地が良かったのか日本に住み着く鳥もいて、江戸(えど)時代には各地にいたらしい。でも明治時代になると狩(か)りの対象になって、兵庫県北部にしかいなくなった。
高いところが好きで、松の木のてっぺんなどに巣をかける。ところが、第2次世界大戦のころに材木や炭に使うために松がどんどん切られた。
戦後、毒性の強い農薬を使うようになり、えさの魚やカエルが死んだ。農薬にまみれたえさを食べたコウノトリも死んでいった。卵を産んでもヒナはかえらず、1971年、日本では絶滅した。
旧ソ連(今のロシア)からもらったコウノトリからヒナがかえり始めたのは80年代の終わりごろ。90年代には数も増えた。でも、そのまま野生に放すわけにはいかない。
大事なのは環境(かんきょう)だった。地元の人は田んぼの農薬をやめ、魚が住める水路をつくった。「コウノトリが住める環境は人間にも安全で豊かな環境だ」と考えたからだ。
2005年9月、とうとう鳥かごから外に飛び立った。いま約20羽が豊岡や周辺の空を自由に飛ぶ。日本中でこんな姿が見られる日がまた来るだろうか。(文・佐々木央、写真・牧野俊樹)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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