(15)おむすびをもらって食事 日本最高齢のはな子
飼育員の木崎恒男(きざき・つねお)さんが大きなおむすびを作った。口に直接入れてやる。もぐもぐ。今度は長い鼻の先に。はな子が落とさないように上手(じょうず)に口元に持っていく。

おむすびのようにしたえさを食べるアジアゾウのはな子=東京・井の頭自然文化園
東京・井の頭(いのかしら)自然文化園のアジアゾウ、はな子は61歳(さい)、日本で最高齢(さいこうれい)だ。歯は1本しか残っていない。ゾウの歯は上の左右、下の左右に1本ずつで計4本、それが一生に6回生えかわる。はな子の歯は20年以上前に1本だけになった。
歯がだめになったら、ふつうは生きていけない。でもえさを工夫した。おむすびの中身はバナナやリンゴ、短く切った草。消化しやすいようにつぶして混ぜている。
はな子は二歳のときタイから来た。みんなの人気者だったけど、不幸な事故があった。50年ぐらい前、夜中に入りこんだ人がふまれて亡くなった。飼育員も1人亡くなっている。
ゾウの足の裏はクッションのようで、足音がしない。ゾウの方も人に気づかないことがある。体重は人の百倍もあるから、ふんづけて「あっ」と思ってもおそい。
木崎さんは8年前に担当になったとき、先輩(せんぱい)に「(人を死なせたという)先入観があるのは仕方ないけれど、自分の感覚で、いまのはな子を見てほしい」と言われた。いま「だんだん気持ちが伝わるようになってきた。はな子が安心できる存在になりたい」と思う。
最近、気になっているのは足のつめが割れていること。大きな体をささえる足のけがや病気は命にかかわる。でも、それも治ってきた。あとは夏の暑さでばててしまわないように、長生きしてほしいと願っている。(文・写真、佐々木央)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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