(96)かさのふちが光を放つ ノーベル賞で有名に
クラゲのかさのふちが弱い光を放つ。泳ぐのでなく、ゆらゆら流されているように見える。えさを食べるときは、丸い形がちょっとゆがむ。

オワンクラゲが小さいクラゲをつかまえようとしている(山形県鶴岡市立加茂水族館提供)
2008年にアメリカボストン大学名誉(めいよ)教授、下村脩(しもむらおさむ)さんがノーベル化学賞を受けて、いっぺんに有名になったオワンクラゲだ。当時、日本で展示していたのは山形(やまがた)県鶴岡(つるおか)市の加茂(かも)水族館だけだったので、たくさんの人が見に来た。
下村さんはオワンクラゲのふちを緑色に発光させている物質を見つけ出した。その物質は今、医学研究などに欠かせない役割を果たしている。
光の正体をつき止めるため、下村さんはアメリカ西海岸でオワンクラゲを何十万匹(びき)もとったそうだ。日本の沿岸にもいて、たまに大量発生する。
かさのふちからのびる糸のような触手(しょくしゅ)で、えさをつかまえる。でも水族館で大きくするには、そのえさが問題だった。
クラゲのえさとしてはアルテミアという小さなエビの子どもをやることが多い。でも、オワンクラゲはそれでは大きくならなかった。
それもそのはず、オワンクラゲは、クラゲを食べるクラゲだった。加茂水族館の村上龍男(むらかみたつお)館長がとなりの水槽(すいそう)を指さした。小さなクラゲがたくさん泳いでいて、シロクラゲと書いてある。「これが好きなんです」
シロクラゲは見ばえはあまりよくない。展示には向かないかなと、村上さんは思っていた。ところが、オワンクラゲに食べさせたら、ぐんと大きくなった。
「きらいなものはいったん触手でつかんでも、はなしてしまう。オワンクラゲは味がわかるのかなあ」(文・佐々木央)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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