(84)すわるのは体を休めるため 兄と妹でちがいも
子どものキリンがあしを折りたたむようにしてすわりこんだ。長い首を地面にのばし、草を食べている。まだあどけない。京都市動物園で夏に生まれたメスの赤ちゃんだ。

夏に生まれたアミメキリンの音羽。ときどきすわりこんであたりを見回す=京都市動物園
「キリンがすわるのはめずらしいですね」と担当の高木直子(たかぎなおこ)さんに聞くと「そうでもないんですよ」と意外な答え。「体を休めるためによくすわります。親子がいっしょにすわっていることもあります」と教えてくれた。
赤ちゃんの名前は「音羽(オトワ)」。京都市にある山の名前だ。高木さんによると、音羽という言葉や山のイメージが赤ちゃんの性格とぴったり。「しんちょうな面もあるけれど、しんは強そう。それにやさしい感じなんです」
お父さんは清水(キヨミズ)、お母さんは未来(ミライ)で、この両親の子どもは2頭目だ。でも最初に生まれたオスの竜王(リュウオウ)とは、ずいぶんちがっている。たとえば、兄の竜王はがっちりした体だけど妹の音羽はほっそり。おっぱいの飲み方だって竜王がグビグビッと飲むのに、音羽はチョビチョビと少しずつだった。
京都市動物園ではこれまで、動物のお母さんのおなかに赤ちゃんがいることをお客さんに知らせていなかった。死んで生まれたり、生まれてすぐ死んでしまうこともあるからだ。でも高木さんは知らせた。
「未来のおなかがだんだん大きくなる。それを見守って、誕生を楽しみにしてほしかった」
もし赤ちゃんが死んだら? 「命あるものは死ぬこともあります。生まれたら、お母さんキリンに『よくがんばったね』と言ってほしいし、だめだったらいっしょに『残念だったね』と思ってもらいたかったんです」(文・写真、佐々木央)
※音羽は7月11日生まれ

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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