(83)日本で初めて生まれたヒナ ペンギンの中で最大
ペンギンの中で一番大きいのに、つばさやくちばしは小さめ。歩くときは体を左右にゆする。よちよち歩きみたいで、ちょっとユーモラスだ。でも、和歌山(わかやま)県白浜(しらはま)町のアドベンチャーワールドでペンギンを担当する三木那央子(みきなおこ)さんによると、それには理由がある。

和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドで初めて生まれたエンペラーペンギンの赤ちゃん(アドベンチャーワールド提供)
「エンペラーペンギンは南極で卵をうんで、足の上に卵をのせ、かえったら足の上でヒナを育てます。マイナス60度の世界。体の熱が外ににげないように、表に出ている面積を小さくしている。だからつばさなんかが小さいんです」
エンペラーペンギンのヒナが日本で初めて誕生したのは2004年、ここアドベンチャーワールドだった。卵は前の年もうんでいたけれど、親が足にのせたままプールに入ってしまい、割れた。
「今度は失敗するわけにはいかない」。三木さんたちは「孵卵器(ふらんき)」という卵をあたためる機械を使うことにした。
約2カ月後、はし打ちが始まる。はし打ちというのはヒナが殻(から)をくちばしでつついて割ること。この段階で注意するのは卵の中がかわいてしまわないようにすることだ。三木さんたちは4時間おきに、夜中もきりふきで水をかけてやった。
卵はなかなか割れない。3日たっても小さな穴が開いただけ。このままでは力つきてしまうかもしれない。そこで殻にひびを入れてやった。5日目の午前2時5分、ようやく殻から出てきた。体重295グラム、手のひらにすっぽりのる大きさだった。
「やっと会えた。君は宝物だよ」。三木さんたちはすごく喜んだ。(文・佐々木央、写真・アドベンチャーワールド提供)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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