(79)星空のようにきらめく 育てるには根気が必要
真っ暗な洞窟(どうくつ)のような部屋の天井に無数の小さな光がきらめいていた。まるで星空のよう。東京の多摩動物公園昆虫園(たまどうぶつこうえんこんちゅうえん)のグローワームの部屋だ。

星のような光の一つ一つがグローワームだ。拡大すると粘液状の様子もわかる(左下)=東京・多摩動物公園
グローは英語で「光」、ワームは「虫」の意味だ。担当の渡辺良平(わたなべりょうへい)さんによると、いま400匹(ぴき)ぐらいが光っている。でも3、4年前、全部で50匹ぐらいまで減っていた。光っているかどうかわからないぐらい。少しずつ増やした。飼育室にも400匹ぐらいいる。
オーストラリアなどにいるヒカリキノコバエというハエの仲間の幼虫だ。洞窟にすんで、ねばる糸をたらし、光に寄ってくる虫を糸にくっつけて食べる。「何の武器も持っていないので、その糸は敵から身を守る手段にもなっています」
生まれたばかりの春先の幼虫は3ミリぐらい。渡辺さんは1匹ずつ小さなケースに入れ、えさのショウジョウバエをやる。「幼虫百匹にえさをやるのに3時間ぐらい。幼虫の元気がなくて食べ残しが出ると、そうじしなきゃいけないのでもっとかかります」。洞窟の方は暗いので、ベッドライトを付けてえさをやる。
ものすごく根気のいる作業だ。おかげで秋ごろには30ミリぐらいになり光も強くなる。そしてさなぎから成虫に。
気温16度、湿度83%に保っている。「外に出ると気温に合わせられなくてすごくあせをかきます」
手をぬくととたんに死んでしまう。たとえばカビがはえると一気に減る。
そんなに大変なのに、つらくないのかな。「ぼくが動物園で働こうとした理由は一日中、虫を見たいと思ったから。こうやって見ていられるだけで楽しいです」(文・佐々木央、写真・萩原達也)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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