(74)長い耳、立派なしっぽ 寝顔を見てほしい
「みんなブタやブタやって言いますけど、ブタとは全然ちがいます。よく見てください」。兵庫(ひょうご)県姫路(ひめじ)市立動物園の上原洋浩(うえはら・よしひろ)さんはツチブタを弁護するみたいにそう言った。

昼間は寝ていることが多いツチブタ。朝のそうじの後だったので、めずらしく動き回っていた=兵庫県姫路市立動物園
「耳はウサギみたいに長いし、しっぽはカンガルーみたいに立派だし、ツメはするどい。いろんな動物の特徴(とくちょう)をかね備えたような不思議な動物なんですよ」
近づくとすごいにおいだ。鼻をツーンとつく。担当に決まったとき、上原さんはほんとは「いややなあ」と思った。「においもそうだけど、夜行性なので昼間はほとんど寝ている。動かない動物の部屋をそうじして、ただえさをやるだけなのかなあって」
担当になってみるとちがった。「いろんなおもしろいところに気付きました」。たとえば、長い鼻の付け根がヒダ状になっていて、ひくひくさせながらえさを食べる。野生ではアリやシロアリを食べるので、鼻の中に入ってこないようにするためだろうと気づいた。
「それにとにかく寝顔(ねがお)がかわいい。一度見てください」。穴をほるのが得意で野生では穴で寝る。動物園にも穴部屋がつくってあり、中が見えるようになっていた。2頭がからみ合うようにして寝ている。
「毎日、寝る姿がちがいます。丸まって寝たり、横になったり。あおむけになることもあります」
去年、動物園のそばでお菓子の博覧会があった。ツチブタ舎は会場への通路わき。においがすごいから、中の方のガラス張りの部屋に移動させられた。「何でこいつだけって、くやしかったです」。今ではほんとにツチブタが大好きなんだ。(文・写真、佐々木央)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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