(66)難問挑戦、ヒナ3羽育てる つばさ広げると2メートルちかく
ニホンイヌワシの「風(ふう)」は去年3月、秋田市の大森山(おおもりやま)動物園で生まれた。もう親鳥と同じぐらい、大きくなった。

佐々木さんの手に乗り、大きな翼を広げるニホンイヌワシの「風」=秋田市大森山動物園
担当の佐々木祐紀(ささきゆうき)さんの手に乗ってときどき園内を散歩する。つばさを広げると2メートルちかく、お客さんもおどろく。「すごーい」「かっこいい」。太くたくましい足、ツメは先がとがって鉄のようだ。つばさの裏が白いのはまだ子どもだから。
ニホンイヌワシは昔は日本各地にいた。上空をすべるように飛び、地面につっこんで地表のえものをとる。いま、そういう狩(か)りができる土地が減っている。えさになるウサギも少なくなった。絶滅(ぜつめつ)するんじゃないかと心配されている。
一つの巣で2羽以上かえっても、ふつうは1羽しか育たない。ヒナ同士の戦いが激しいからだ。たいていは先にかえった強い方が生き残る。
大森山では3年前の春、3羽のヒナがかえった。大切なヒナだ。なんとか3羽とも育てたい。佐々木さんたちは難問に挑戦(ちょうせん)した。
1カ月ぐらいたつと、ヒナ同士の戦いは自然におさまる。それまでの間、巣には1羽だけしかいないようにした。残りの2羽は人が育てる。何日かごとに入れかえて、1羽が3分の1ずつ親と暮らせるようにした。
人が育てると、人を親と思い、本当の親をこわがる。人間の姿を見せないように、布でおおった箱に入れた。水道やドアの音もたてないようにした。本物の巣の近くにおいたマイクで拾った音を聞かせた。えさは、鳥の頭のような形にした道具でつまんであたえた。ヒナは3羽とも元気に育った。風はその弟だ。(文・写真、佐々木央)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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