(64)しま模様はカムフラージュ さっと消える「魔術師」
ボンゴはとてもめずらしい動物だ。名古屋市の東山動植物園で担当する猿渡一(さるわたりはじめ)さんによると、アフリカの高地にすみ、雨の多い雨期には標高4千メートルぐらいの所にいる。雨の降らない時期でも2千メートルぐらいまでしかおりて来ない。高い所にいるのは敵が少ないからだ。

ボンゴは角が立派で耳も大きい。この耳で小さな物音も聞きわける=名古屋市の東山動植物園
ハンターが仕留めたいとねらっても、物音で気付いてさっと消える。それで「森の魔術師(まじゅつし)」という別名がある。
動物園にいても神経質。人間に聞こえない音も聞こえるらしい。大きな耳を音のする方に向けて、ずっと気にしていることがある。そういうときは、夕方になって運動場から部屋に入れようとしても、動いてくれない。どうするんですか?
「無理にせき立ててもだめです。時間をかけて落ち着くのをゆっくり待つしかないんです」
草を食べ、ウシやキリンと同じように、おなかから口にもどしてまたかむ「反すう」をする。リラックスしているときは、地面に座ってのんびり反すうしている。
ジャンプ力はすごい。猿渡さんは、助走なしのその場飛びで1メートルのさくを飛びこえるのを見たことがある。ほかの動物園では2メートルも飛んだことがあったそうだ。
オスもメスも大きな角がある。赤茶色の体に白のしま模様があざやかだ。「体の色や模様は、目立たないようにするカムフラージュなんです」と猿渡さん。
しま模様があると、森の光とかげにとけこむ。赤茶色の体はアフリカの土の色に近いらしい。人間から見るときれいだなあと思うけれど、ボンゴにとっては、生きのびるためなんだ。(文・写真、佐々木央)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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