(62)神経質で人になれない 野生では激減
日本と韓国の間、玄界灘(げんかいなだ)と呼ばれる海に対馬(つしま)という島がある。ツシマヤマネコはその島だけにすむ。野生では多くても110匹(ぴき)ぐらいしかいないらしい。このままでは絶滅(ぜつめつ)してしまう。対馬の人たちや動物園の人たちが協力して、何とか増やそうとがんばっている。

用心しながらえさを食べるツシマヤマネコ=福岡市動物園
福岡(ふくおか)市動物園では10年ぐらい前から子どもが生まれている。担当の永尾英史(ながおえいじ)さんに「飼育はむずかしいですか」と聞くと「神経質で人になれないんです」と説明してくれた。ネコの方からは近寄って来ないし、こちらがさわることもできない。
無理に近づいたらどうなるんですか? 「かまれるでしょうね」。じゃあ、かわいいなんて思えないのかな。「いえ、かわいいという気持ちも、愛情もありますよ」
えさをやるところを見た。生肉を皿にのせ部屋の真ん中あたりに置く。ネコはすみにいて動かない。永尾さんが部屋から出てもじっとしている。10分ちかく、ようやくえさに近づいて食べ始めた。
皿の肉は200グラムぐらいあるのに、あっという間に食べきってしまった。
野生ではネズミやモグラ、カエルなどを食べる。急に減ったのは森の木がきられ道路ができて、えさも生きる場所もへったから。交通事故にあったり、わなにかかったりして死ぬこともあった。
動物園などにいる数が100匹ぐらいまで増えたら、少しずつ野生にかえす。かえす場合は、生まれてすぐに訓練を始める。動物園の生活になれてしまうと野生では生きていけないから。だからいま動物園にいるツシマヤマネコはかえせない。ちょっとかわいそうな気がした。(文・写真、佐々木央)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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