(59)飼育には観察が一番大切 世界最初のライオンバス
東京の多摩(たま)動物公園でライオンバスに乗った。あちこちにライオンがいる中をバスはゆっくり走る。車が止まると、窓わくに付けた馬肉を食べようとライオンが近づいてきた。たてがみの立派なオスの顔がどアップ。でもよく見るとネコに似て、けっこうかわいい。

バスから見たライオン。すごい迫力だ=東京・多摩動物公園
多摩のライオンバスは45年前から。動物の中に車で入っていくのは初めてだった。今では世界中がまねしている。
担当の1人は近藤奈津子(こんどうなつこ)さん。「女性が猛獣(もうじゅう)の担当なんてこわくないですか」と聞いたら「わたしで3人目です」と平気な顔。「でも最初は車の運転が大変でした」。ライオンの飼育と車の運転にどんな関係があるの?
ライオンが寝室(しんしつ)に帰らないとき、車で追いかけてもどす。けんかしているときは、車で割りこんでやめさせる。坂道や土手が多く、雨の日はすべる。もたもたしていると近寄って来る。「プレッシャーでした」。ライオンは「なになに、面白いものを見つけた」という目で見るんだそうだ。
大切なのはよく観察すること。1頭ずつ見わけて関係もちゃんと理解しておく。例えば、追いかけた先にいじめっ子がいたらけんかが起きるから。
病気やけがで弱っていても人を殺す力を持っている。注射も簡単にはできない。年を取っていると薬が逆効果の場合もある。
どうするか一生懸命(けんめい)考える。動けなくなっているなら、寝(ね)わらを入れるとか、えさをかめなくなっていたら飲みこめる大きさにするとか。ひどく出血していても本当はだいじょうぶなこともある。やっぱり観察が何より大切なんだ。(文・佐々木央、写真・萩原達也)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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