(58)葉っぱでキノコを育てる にげないよう2重のとびら
アリが葉っぱを切り取って巣に運んでいく。自分の体よりも大きな切れはしだ。仲間が葉っぱに乗っかってきたりしても気にしない。かなりのスピードで枝をわたっていく。力持ちなんだ。

葉っぱを運ぶハキリアリ=東京・多摩動物公園
巣に運んで食べるのかと思ったらそうじゃなかった。東京・多摩(たま)動物公園でハキリアリを担当する野村友宏(のむらともひろ)さんに説明を聞いた。
「葉っぱはキノコを育てるのに使うんです」。キノコといっても、シイタケやシメジみたいにかさができるやつじゃなく、小さな白いつぶのような形をしている。葉っぱは細かくかみくだき肥料にする。育てたキノコは幼虫などに食べさせる。
飼育ケースには、むしたサツマイモやリンゴもあって、それもけずって運んでいた。
キノコを育てるから「農耕するアリ」とも呼ばれる。葉っぱを運ぶ姿がかさを差しているように見えるので「パラソルアント」という呼び方もあるそうだ。アントは英語でアリのこと。
もともと暑い中南米にいるので、飼育室は1年中28度ぐらい、湿度(しつど)も高い。「あったかくていいねと言われることもありますが、年中暑くて大変です」と野村さん。
植物の葉をたくさん切り取ってしまうので農家にとってはじゃま者の「害虫」だ。日本にはいない害虫をにがして、増えてしまったら困る。そこで飼育室はかぎのかかる2重とびらにしている。
1つの群れには「女王アリ」と「働きアリ」のほかに、働きアリより大型の「兵隊アリ」もいる。「兵隊アリはあごが大きくて、人間のひふも食い破ります」。あなどれないんだ。(文・佐々木央、写真・萩原達也)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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