(13)数の大小がわかる すぐ覚えた日本語
近寄ってきた。とても大きい。すごい迫力だ。でも飼育員の横島雅一(よこしま・まさかず)さんが「止まれ」と命令すると素直に止まった。
東京・上野動物園にいるアジアゾウのメス、アーシャーは4150キロ、人間の大人の100倍近い。「危なくないんですか」と横島さんに聞いた。

ゾウのアーシャー、間近で見ると本当に大きい=東京・上野動物園
「たとえば犬がほえるとおどろいてそっちをふり向きます。そこにいるとたおされちゃう。だから近づくときゾウじゃなくまず周りを見る。おどろいたりするものがないかって。1番いやがるのはヘリコプターですね」
とてもかしこい。東大大学院の入江尚子(いりえ・なおこ)さんの研究によると、2つのバケツにバナナを入れるところを見せると、ちゃんと多い方を選ぶ。入江さんは「チンパンジーやサルは数が大きくなるとまちがいが増えるけど、ゾウは正解率が落ちない。ゾウの頭は特別です」と話す。研究にはアーシャーも協力した。
横島さんは上野にいるアジアゾウでアーシャーが1番かしこいという。
大きいので人間が無理に動かすことはできない。言葉で命令して動いてもらう。アーシャーがインドから来たのは24年前。7歳(さい)半でヒンディー語しかわからなかった。最初、横島さんは命令をヒンディー語と日本語の両方で話した。「そしたら1カ月もしないで日本語も覚えたんです」
ゾウは飼育する人を選ぶ。近づくまでに長い時間がかかり、最後まで寄せつけない人もいる。
横島さんは担当をはずれていた時期があった。4年ぶりにもどってきたとき、においをかいできた。「後はもう何もしなかった。覚えていてくれたんです」(文・佐々木央、写真・萩原達也)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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