(50)おぼれそうになったことも コビトカバの子ども
世界でもめずらしい生きものコビトカバ。カバは草原にいるけれど、コビトカバは森林にすむ。体が小さいだけなく、よく見ると、目も鼻も顔の形もカバとはちがう。
東京・上野(うえの)動物園には4頭。お父さんとお母さん、その子ども2頭だ。

カバを小さくした生きものかと思ったら、いろんなところがちがっている=東京・上野動物園
一番下のメスのコウメは2006年に生まれた。担当の原田実乃里(はらだみのり)さんに「感動しましたか?」と聞くと「喜ぶどころじゃないんです」と意外な答え。動物の赤ちゃんは一週間以内に死んでしまうことがよくある。逆に一週間ちゃんと育っていれば、母乳も飲んでいるということだし、体力もついてくる。だから初めは目がはなせない。
コウメが生まれたのは真冬だった。カバの部屋は、プールの水温を上げてあたためる。でも出産のために水をぬいていたので部屋は寒い。コウメが寒くないように草をいっぱいしいた。
10日目、やっとプールに水を入れた。お母さんのエボニーは入るけど、コウメは見ているだけだろうと思っていたら、コウメも入ってしまった。赤ちゃんは泳げない。コウメがしずんでいるのに、エボニーは気づかず、楽しそうに泳いでいる。
助けなくちゃ! 原田さんはコウメをくま手ですくい上げようとした。すると、エボニーは攻撃(こうげき)されたとかんちがいして、原田さんに向かってきた。
くま手を引っこめながら原田さんがさけんだ。「じゃあ、あんたがちゃんとめんどうみなさい」。エボニーがようやく気づいてコウメを鼻で陸におし上げた。
コウメはいま元気で走り回っている。助かってよかったね。(文・写真、佐々木央)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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