(49)じっと動かずえもの待つ 見るのは朝夕がチャンス
担当の葛西宣宏(かさいのぶひろ)さんが近づくと、ゆっくり首をさげるような動きをした。「動かない鳥」として有名なのに、葛西さんにはあいさつしているのかな。
大きな頭、青みがかった灰色の目、1枚1枚ふちどりしたような羽、それにでっかいくちばし。何だか面白い。上野動物園に来ても、ハシビロコウだけを見て帰る人もいるそうだ。

わらのうえにすわっている。動かないけど見ていてあきない=東京・上野動物園
動かないのはなまけてるんじゃない。動物にはえものを追いかけてつかまえるタイプとじっと待つタイプがある。「ハシビロコウは待つ方なんです」と葛西さん。魚つりで、静かに糸をたれているような感じかな。
動いているところを見たかったら?
「動物園が開園してすぐ、朝イチで運動場に出したときはけっこう動いて、飛び回ってます。あとは閉園近く、夕方に寝室(しんしつ)に帰る前にも動きが出てきます」
動かない鳥というイメージがひっくり返るそうだ。
よく見ると、くちばしの先はカギのよう。かまれるとつぶれてしまう。両わきは刃物(はもの)のように切れる。えさの魚を強くかみすぎて、スパッと切れてしまうことがある。
つかまえて体調を調べることがある。こんなに大きくて、すごいくちばしの鳥をどうやって?
体をかかえこむと同時にくちばしもにぎって開けないようにする。「強くかかえると、骨が弱いからすぐ折れちゃう。だから包みこむように」
つかまえた後はショックでしばらく元気をなくす。いじめられたみたいに感じるらしい。
「あの体の形や羽のグレーの濃淡(のうたん)を見ると、人間じゃつくれない、神様ってすごいのをつくるなあって思います」(文・写真、佐々木央)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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