(12)昔農業に、今教育に役立つ 日本で一番小さな馬
茶色っぽいのが多いけれど、中には黒いのや白いのもいる。馬にしては小さくて、ずんぐり。そばに行くと、えさがもらえると思ったのか大きな顔が近寄ってきて、よけい大きくなった。気がやさしくて力持ちなんだそうだ。
野間馬(のまうま)は日本に昔からいる「在来馬」の1種。このごろは、馬といえば競馬を走る大型のサラブレッドや小さなポニーぐらいしか見かけないけれど、昔は日本各地に在来馬がいた。

白い毛の野間馬。いろんな色の馬がいる=愛媛県今治市の野間馬ハイランド
野間馬は愛媛県今治市(えひめけんいまばりし)にいる種類で背の高さは1メートルちょっと、在来馬の中で1番小さい。江戸時代の殿様(とのさま)が今治市の野間(のま)という所で馬を育てさせ、大きい馬は買い上げ、小さい馬は農家にあたえた。それが続いて小型の種類ができたらしい。
小道や坂道の多い瀬戸内海(せとないかい)の島々では、小さくて力がある野間馬は荷物を運ぶのにぴったりだった。戦後は農業が機械化し、車の利用も広がって使われなくなり、1970年代には6頭だけに。
そこで子どもを増やす計画が始まって、いま今治市の野間馬ハイランドには約80頭いる。園長の大沢勝幸(おおざわ・かつゆき)さんは「人に使われてきたので人なつこい。さわってもいいし、馬を訓練すれば子どもでも乗れます」と話す。
野間馬ハイランドには子どもの乗馬体験コースもある。背が低いので落馬してもけがの心配はない。「こわがっていた子も乗ってみると『気持ち良かった』『面白かった』と言います」
大沢さんは時々馬を連れて学校に行き、人と野間馬の歴史を説明する。昔、農業をになった馬が今では教育に役立っているんだ。(文・佐々木央、写真・萩原達也)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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