(2)くりくりの目が印象的 救えなかった命
ようやく見つけた。小屋の上に寝そべっている。メスの「キキ」だ。白くふちどられたくりくりの目玉。頭の毛が逆立って、太陽の光にすける。
ダスキールトンは東南アジア、マレー半島にすむ。皮下脂肪(しぼう)が少ないので寒さが苦手だ。冷え込む日は暖房(だんぼう)の入った小屋の天井(てんじょう)にいることが多い。

ダスキールトンのキキ。目のまわりの白い輪は生後6週間ぐらいからできるという=横浜市旭区の動物園「ズーラシア」
前回のドゥクラングールと同じように木の葉を食べ、どちらも英語では「リーフイーター」と呼ばれる。リーフは「葉」、イーターは「食べる者」、日本語なら「葉食いザル」になる。木の葉を消化するため胃は四つの部屋に分かれ、微生物(びせいぶつ)がいて消化を助けている。
ダスキールトンは、日本ではキキを含め、横浜市(よこはまし)のズーラシアに2頭しかいない。飼育員の田島俊一郎(たじま・しゅんいちろう)さんはちょっぴりつらそうだった。人気者だったオスの「ココ」が去年4月に死んだ。死因ははっきりしない。
その後、3歳(さい)の女の子から手紙が届いた。女の子は来園した時に必ずココに声をかけ、ココも「くわあっ」と返事をしていた。手紙は手書きのココの絵に「ありがとう」と書きそえてあった。
サルは自分や仲間の毛づくろいをする。ココは田島さんの頭をぐちゃぐちゃにして毛づくろいをしてくれるほど仲良しだった。田島さんはズーラシアのホームページにこう書いている。
「救えなかった動物のことにふれるのは担当者として申しわけないという思いでいっぱいです。でも女の子が送ってくれた絵によって、応援(おうえん)してくださる方が大勢いることを、あらためて教えていただいたように思います」(文・佐々木央、写真・有吉叔裕)

佐々木央(ささき・ひさし)1956年青森県生まれ。共同通信編集委員。社会部で教育問題や少年事件を長く取材してきた。著書に若者の生きづらさを取材した「未来なんか見えない 自傷する若者たち」(共同通信社刊)がある。
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