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マンガでゼミナール 分かりやすく、そして面白く伝えることに全力投球している、漫画家ならではの時点で

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法廷画はありのまま描く 「トコノクボ」の榎本よしたかさん 07.01

イラストレーター、法廷画家として活躍する榎本よしたかさんが自伝漫画「トコノクボ―とある絵描きの半生記―」を電子出版した。イラストのプロに必要な心構えとは―。

法廷画はありのまま描く 「トコノクボ」の榎本よしたかさん

「トコノクボ-とある絵描きの半生記-」

法廷画はありのまま描く 「トコノクボ」の榎本よしたかさん

ⓒ榎本よしたか

初めての傍聴

法廷画はありのまま描く 「トコノクボ」の榎本よしたかさん

榎本よしたかさん

なるほど

 イラストレーションは「図解する」という意味を持ちます。写真や文章だけで伝えきれないものをより分かりやすくするためにあり、お客のニーズを満たして効果的に伝えるのが目的。作家自身の世界を追求する芸術家の仕事とは性質が異なります。


 「アーティスト寄りの人間は仕事さえできればいい」というのは誤った思い込み。大企業に入れば、その看板がものを言うけれどフリーランスの人間には何の看板もない。だからこそ人となりが大切で、社会常識の習得が必須なのです。


 注文する立場を考えて、僕は仕事の依頼は24時間電話連絡OKにしています。社会人生活で身につけた常識やビジネスマナーが独立後も役に立っています。


 人を楽しませるために絵を描く仕事をしていますが、唯一 違うのが法廷画。カメラで撮影することができない裁判中の様子を描く仕事です。10年間で約40件、計300枚描きました。世間を騒がせた被告が、どんな態度で裁かれているのかをビジュアルで伝えるのには社会的な意義があると考えています。


 普通似顔絵は、相手の魅力を引き出すように描くけれど、あくまでカメラの代わり。どんな凶悪犯罪でも、わざと人相を悪く描くようなことはしない。なるべく主観は入れずに見たままを写す。

 正面を向いて座った被告の後頭部しか見えないときは、振り返った瞬間を目に焼き付ける。いったん法廷の外に出て小窓からのぞき込むと違った角度の顔が見えます。スピードも大切で1枚10分から15分で下絵を仕上げます。


 フリーであることの不安は無くなりません。「才能を認めてくれない世間が悪い」なんて言い訳をしても無意味で、絵を欲しがってくれる人の手元に、より質の高い作品を届ける努力をし続けなければならないと思っています。

 

榎本よしたかさん略歴

 えのもと・よしたか 1977年和歌山市生まれ。7年間家具製造会社に勤務した後、イラストレーターとして独立。雑誌、テレビ番組用のイラストなどを手がけている。地元テレビ局の依頼がきっかけで法廷画を描き始め、10年間で約40件の注目裁判を傍聴した。「トコノクボ―とある絵描きの半生記―」は、電子書店「キンドル」で購入できる。


 

裁判報道に欠かせぬ要素

 

 刑事訴訟規則と民事訴訟規則により、裁判中の法廷内では撮影が禁じられている。そのため、被告らの挙動をビジュアルで報じる手段として法廷画が活躍。作品は、ニュース番組や新聞紙面を飾り、裁判報道に欠かせない要素だ。


 法廷画は単なる似顔絵ではなく、写真や映像の代わりに被告の姿や法廷の雰囲気を伝える。榎本さんは「被告が入廷した瞬間から、一挙手一投足を見逃さないよう穴があくほど観察します」と語る。


 法廷画家に資格は不要だが、相応の技術とスピードが求められる。傍聴希望者が殺到する注目裁判では、報道関係者とともに法廷画家も抽選の列に並ぶという。(近藤誠、掲載再開しました)

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