2010年03月03日
4夜連続ドラマ「卒うた」もいよいよ最終話。松任谷由実の「卒業写真」をモチーフに、都会で傷ついた女性の再生を長沢まさみ主演で描く。
1~3夜まで、物語を見守るラジオのパーソナリティーとして登場した仁美(長沢)。4夜はその仁美自身の物語だ。意に沿わない仕事、不倫関係、同僚からの中傷…。自分を見失いそうになっていた仁美は、故郷に帰り幼なじみの剛史(増田貴久)に久しぶりに会う。気弱だが、優しい剛史と故郷の風景に、昔を思い出し癒やされる仁美。しかし、剛史の実家の米店は、間もなく閉店しようとしていた―。
「卒業写真」はユーミンの荒井由実時代の曲で、ハイ・ファイ・セットが歌ってヒットしたので、山本潤子の声で覚えている人が多いかも。「変わっていくわたし」と「卒業写真のまま変わらないあなた」の対比の中で、2度と戻らない青春を切なく振り返る名曲だ。
ドラマはこれを、都会で働く勝ち気な女子と故郷に残った心優しい男子の対比に置き換えて描く。大きな事件は起きないので、登場人物の気持ちの変化を表現するのが難しいところ。増田は頼りなさそうだが誠実な剛史をうまく演じている。一方で長沢の役は、もっと強気を装い、虚勢を張る感じにした方が、分かりやすかった気がする。
無理なヤマ場を作らず、豊かな自然の風景に登場人物を溶け込ませる作り方は、好感が持てた。その場合、ちりばめたエピソードがどう有機的につながっていくかが見どころになるが、残念ながらそこはちょっと弱い。
仁美が剛史をヘッドロックする場面などは、ほほ笑ましく、2人の関係性がよく出ている。しかし、肝となるカセットテープの場面(具体的には書かないが)は唐突で、いかがなものかと疑問に思う。しかも、長沢とカセットテープの組み合わせは、どうしたって「世界の中心で、愛をさけぶ」を連想してしまう。
「卒業写真」はユーミン自身の作詞作曲だが、「あなたはわたしの青春そのもの」というストレートなメッセージよりも、情景の描写に彼女の天才があると思っている。特に、同じ春の季語でも、ありがちな「桜」ではなく、変わることのない「柳」をさりげなく描いたところに、心を動かされる。歌を聴くたびに、自分は柳が揺れる川べりの通学路を切なさとともに思い出す。
感情移入できるかどうかは、一見わずかな差だが、それを生み出すのは容易ではない。ありふれた物語を輝かせる何かを、ドラマの作り手は、ぎりぎりまで追求してもらいたい。(デスク清水)
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